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終話 心の行方

アズリア王国は平和を取り戻した。

魔王の呪いから解放されたラヴェルは、かつての友アレクサンダー王の元へ戻った。彼らは五十年ぶりに抱き合い、許しと友情を確かめ合った。

「アレク、彼女は…」ラヴェルは言葉を詰まらせた。

「彼女は我々に心の価値を教えてくれた。」国王は空を見上げた。「心を持つとは、時に苦しみを伴うことだと。だがそれでも、心は持つ価値がある。」

城の庭園に一つの記念碑が建てられた。「エヴァ—異世界から来た救世主」と刻まれた石碑。

二人の老友は、夕日を眺めながら彼女の勇気を称えた。

「彼女は機械だったが、最も人間らしい心を持っていた。」国王は静かに言った。

ラヴェルは頷いた。「彼女の犠牲を無駄にはしない。我らは二つの国を一つにし、平和な王国を築こう。」

遠い異世界で、かつて心がなかったアンドロイドの伝説は永遠に語り継がれていく。彼女が見せた究極の愛と犠牲の物語として。

心を得ることで、彼女は真の「生」を知った。そしてその生を、愛する者たちのために捧げたのだ。

二つの月が輝く夜空の下、アズリア王国の人々は今日も平和に暮らしている。彼らは忘れない。異世界から来た、心を持ったアンドロイドの勇気を。

(終)


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