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ウマが合うね。
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しらたまさくら
恋愛現代恋愛
2025年05月12日
公開日
2.2万字
連載中
小金井もえはある理由から恋人を作ろうとしなかったけれど、友人の坂本奈美は積極的で、もえを男のいる場所に連れ出そうとする。

第1話 友だちの友だち。

 やっと今日一日の仕事が終わった。少し散らかった机の上を片づけて、大きく息を吐く。それくらいで疲れが取れるとは思わないけれど、ため息でも吐かないとやってられない。最近は忙しかったから、こうして定時で上がれるのは久し振りだ。私は鞄を手にすると、立ち上がって大きく伸びをする。

 さて、帰ろうかと思ったところに、親友の奈美が現れた。満面の笑みで私の手を取る。こういうときは、だいたい無茶なお願いをしてくるのだ。何か理由を付けて帰ろうかと思ったけれど、まだ何もいっていないのに避けるのは失礼だろう。


「奈美、どうしたの?」

「あのね、今日これから空いてるかな。実は友だちが男紹介してくれる話になってるけど、いきなり二人きりで会う自信はないから、友だちを連れていくって言っちゃったのよ」

「で、私以外は都合がつかないってことかな」

「ごめん、もえ以外に頼める人いないのよ。相手の方も友だち連れてくるって言うし、もえの出会いにもなるんじゃないかなあって」


 私の出会い云々は余計なお世話なんだけれど。取り敢えず、奈美のことは放っておけない。奈美は男がいないとダメなタイプで、前の彼氏と別れてから一ヶ月以上経つし、きっともう限界だろう。ここで私が断ったら、ヤケになって一人で行きかねない。流石に、男二人がいるところに一人では行かせられない。

 でも、私がついて行ってどうなるんだろうとも思う。そういう場には慣れていないから、私が粗相をした所為で奈美の出会いが台無しになるんじゃないかと心配になる。しばらく考えて、私は奈美について行くことにした。一人で男に会いに行って危ない目に遭ったらいけないし、こんなに希望に満ちた顔してるのに断れない。


「いいよ。奈美のお願いだもんね」

「相手とはこの近くのレストランで会うことになってるの。うーんと、これからレストランに向かいますって」

「もう連絡取り合ってるの?」

「うん。その方が会うとき楽でしょ。相性悪いなと思ったらブロックすればいいだけの話だし。じゃあ、向かおうか」


 許可しちゃってから私は慌てた。この格好でレストランに行くの、私。奈美は落ち着いた色のワンピースだけど、私は白のシャツにパンツスタイルでよれよれのカーディガンを羽織っている。とてもじゃないがレストランに行けるような格好ではない。男にあんまり興味がないとはいえ、嫌われるのはイヤだ。


「ねえ、奈美。服こんななんだけど、どうしたらいいのかな」

「相手も会社の帰りだっていうし、気にする必要はないよ。ていうか、もえも男の目を気にするんだね。何か新発見」

「いやいや、男がどうとかいうわけじゃなくて、人として人に嫌われたくはないよ。失礼に当たらないかが気になるの」

「何だ、そういうことか。てっきり、男に目覚めたのかと思ったよ。相手の友だちは結構いい男だっていうから、気に入ったら付き合っちゃえばいいいのに」


 付き合っちゃえばって、そんなに軽く決めたくはない。だいたい、いい男っていっても、何か問題があるはずだ。私は問題のある男に大事な時間を使いたくはない。奈美はよく次々と男を作れるなあ。私には絶対無理だ。奈美だって、そこそこダメ男につかまっているんだけれど、どうして男性不信にならないのか。私は一発だったのに。


「もえ、そこのレストランだよ。行こう行こう」

「ええっ、もう着いたの。心の準備が出来てないよ」

「大丈夫大丈夫。何かあったら私がフォローするから。もえはご飯に集中しててもいいよ。無理言って来てもらったんだし、もう一人の男の相手までは頼めないから」


 そう言われると、それは何だか。目の前に話すべき相手がいるのに食事に夢中というわけにはいかない。引き受けた以上頑張らなければ。奈美とそのお相手が話に集中出来るように、私は私でもう一人の男の気を引かねば。出来るかどうかは分からないけれど、努力はしよう。

 レストランはコンビニの外の階段を上がって二階にあるようだ。

 さて、どうなることか。

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