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第2話 約束のレストラン。

 そこはレストランというよりはちょっと洋風の居酒屋みたいな感じで賑わっていた。奈美はスマホを確認すると、すいすいと店の奥へ進んでいく。お洒落なレストランとかでなくてよかった。ここなら私の服装でも浮かない。酷い服装であることに代わりはないけれど。黙ってついて行くとスーツ姿の男の人たちがいて、奈美が覗き込むと二人とも立ち上がり、座るように促してきた。奈美は迷わず左側のイスに腰をかけ、私は反対側に腰を下ろす。すると、左の男性は黒田大也、右の男性は細川泰斗と名乗った。


「ちょっと遅れちゃいましたね。ごめんなさい」

「いいよいいよ、気にしなくて。俺たちも今着いたばかりだし」

「私は坂本奈美です。こっちは親友の小金井もえ。二人まとめてよろしくお願いしますね。私たちのことは名前で呼んで下さい」

「俺も大也でいいよ。今日は気を張らずに楽しもう」

「大也、話よりも先に料理の注文をしよう。二人とも仕事終わりでお腹が空いているだろうし」


 泰斗さんの提案により、先に料理を注文することになった。そこで気づいたんだけど、二人ともグラスの水が減っているから、結構待ったんじゃないだろうか。待たせたのは私が返事を渋ったからだよなあ、きっと。申し訳ない。男の人たちは結構がっつりご飯に軽いお酒、私と奈美は本日のおすすめメニューとサラダ、それに軽くお酒を注文した。

 それから話し出したのだけれど、奈美と大也さんがいい感じに盛り上がっている。奈美が店には行ってすぐに大也さんが分かったのは、先に大也さんがメッセージに写真を添えていたからだったようだ。奈美は一目惚れだろうな。大也さん、背が高くてカッコいい奈美の好みのタイプだ。ちなみに、泰斗さんの方も背が高くて知的な感じの人である。


「ここの料理美味しいでしょ。奈美さんももえさんもたくさん食べて下さいよ」

「ふふ、たくさん食べたら太っちゃいますよ」

「奈美さん、細いじゃないですか。大丈夫ですよ。奈美さんみたいな人に彼氏がいないなんておかしいですよね。周りの男に見る目がないんですね」

「やだあ、そんな褒めても何も出ませんよ。大也さんは結構食べるんですね。私、たくさん食べる男の人大好きです」


 二人で盛り上がっている。いや、元々大也さんと奈美が二人で会う予定だったわけだから、これでいいんだと思う。一方、私と目の前に座っている泰斗さんにはほぼ会話がない。ただひたすらに食事をしている。料理もお酒も美味しいから、それで全然構わないんだけど。私は奈美の付き添いだから、無理して話をする必要もないし。

 ご飯を食べ終え、それからしばらく奈美と大也さんが話し込んで、今日はお開きということになった。奈美と大也さんは結構気があったようで、この後少し飲んで帰るとのことだ。これはこのまま付き合う感じなのかな。大也さんいい人そうだし、二人がうまくいってくれるならいいなあと思う。


「そうだ泰斗、もえさんを最寄り駅まで送ってあげたらどうだろう。もういい時間だしし、女の子一人で帰らせる気じゃないだろ?」

「いっ、いえいえいえ。気にしないで下さい。大丈夫です、一人で大丈夫です。誰も私なんか襲いませんから」

「もえ、せっかくだから送ってもらいなよ。私も心配だしさ。もえだって女の子なんだから、自分を大事にして」

「僕でよければ送りますよ。地下鉄ですか?」


 これは、断るに断れない。私はちょっと頑張ってみたものの、結局送ってもらうことになってしまった。奈美はこれで安心だとか言ってるし。心配してくれるのはありがたいけれど、泰斗さんと二人はちょっと気まずい。さっきから会話らしい会話がないし、駅まで何を話せばいいのか。ちょっとだけ心が重い状態で店を出た。そこで、奈美と大也さんは繁華街に向かい、私と泰斗さんは駅に向かう。

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