目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
「国家反逆罪で追放?濡れ衣は嫌なので実際に国家反逆実行しちゃいます!」
「国家反逆罪で追放?濡れ衣は嫌なので実際に国家反逆実行しちゃいます!」
ゆる
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年05月14日
公開日
3.4万字
完結済
5歳の王女ナヴィアは、無実の罪で帝国を追われた――。 「国家反逆罪?わたし、そんなのやってないよ……でも、やれって言うなら、ほんとにやっちゃうからね?」 陰謀に巻き込まれ、帝国から追放された幼き王女は、姉たちのいる周辺国を巡り、少しずつ仲間と力を集めていく。 誰もがあきらめる中、彼女だけはあきらめなかった。幼い少女が立ち向かうのは、巨大な権力と、不正に支配された国。 そして、彼女は宣言する―― 「帝国を取り戻すのは、このナヴィアだよ!」 幼女×策略×王国逆転劇! 可憐で痛快な"ざまぁ"ファンタジー、開幕!

第1話 宰相の陰謀

「ナヴィア殿下、少しお話があります。こちらにお越しください。」


宰相ダリウスが、いつもの冷たくも丁寧な口調で言った。その声を聞いて、ナヴィアは小さな眉をひそめた。まだ幼いながらも、その声にはどこか嫌な響きがあることを感じ取っていた。


「お話って、なぁに?」

ナヴィアは無邪気な声で聞き返しながらも、心の中では警戒していた。


「陛下の容体がますます悪化しておられます。もはや長くはないでしょう。」


その言葉に、ナヴィアは驚いて目を大きく開いた。


「お父様が、そんな……!治るんじゃないの?」


ダリウスは、薄い笑みを浮かべて首を振った。


「残念ながら、それは難しい状況です。そして、殿下、帝国の未来について少しお考えいただきたいのです。」


「帝国の未来?」


ナヴィアは首を傾げる。まだ5歳の子供には難しい言葉だったが、父の病状が重いという話から、何か重要なことを話されているのは理解できた。


「そうです。陛下がご健在でなくなられた後、この国を治めるのは殿下です。」


「え?わたしが?」


ナヴィアは大きな声で叫んだ。父である皇帝がいるのに、自分が国を治めるなんて想像もしたことがなかった。


「まだ小さいのに、そんなの無理だよ!」


宰相は静かに笑った。


「ご安心ください、殿下。私が全てをお支えいたします。殿下にはただ、私が指示した通りにしていただければ、それで結構です。」


ナヴィアはその言葉に、何か嫌なものを感じた。


「でも……お父様が元気になったら、またお父様がやるんだよね?それならわたし、何もしなくていいよね?」


宰相は一瞬だけ口元を歪めたが、すぐに冷静な表情に戻った。


「陛下がお元気になることを願っています。しかし、万が一の場合に備え、準備は必要です。」


ナヴィアは小さな手を組み、じっと考え込むようにした。そして、しばらくして顔を上げた。


「でもね、宰相さん。お父様がまだ生きてるのに、そんな話するのって変だよ。お父様が病気でも、治るように頑張らないといけないのに。」


その言葉に、ダリウスの笑みが一瞬消えた。しかし、すぐに優しげな顔を作り直した。


「もちろん、その通りです。ただ、国の未来を考えるのも必要なことですから。」


ナヴィアは頬を膨らませて、小さな声で呟いた。


「宰相さん、なんか変……。」



---


宰相の不穏な計画


ナヴィアが部屋に戻った後、宰相ダリウスは執務室に戻り、冷たい目で書類を見つめていた。


「この小娘……思ったよりも鋭いな。」


ナヴィアの純粋な目と言葉が、ダリウスの計画に僅かな狂いを生じさせた。しかし、それが彼を止めることはなかった。


「だが、問題はない。あの子供を従わせるのが難しいなら、別の手を使えばいいだけだ。」


彼は机に置かれた書類に目を通すと、冷酷な笑みを浮かべた。それは、ナヴィアに国家反逆罪を着せるための偽造文書だった。


「皇帝陛下が回復しないうちに、この国の実権を完全に掌握する。それを邪魔する者は、たとえ5歳の王女でも排除するまで。」


その言葉が響く執務室には、冷たい空気が流れていた。



---


ナヴィアの不安


その夜、ナヴィアは寝台の上で膝を抱えながら考えていた。父である皇帝が重い病に倒れていること、そして宰相の話。


「お父様、早く元気になって……。」


ナヴィアは小さな声で呟いた。その時、側で寝支度をしていた侍女のアルマが声をかける。


「ナヴィア様、大丈夫ですか?」


「うん……でも、お父様が心配。」


アルマはそっとナヴィアの隣に座り、彼女の頭を優しく撫でた。


「陛下はきっと回復されます。ナヴィア様が元気でいらっしゃれば、それが何よりの薬になるはずです。」


「そうだよね……わたし、頑張る!」


ナヴィアは小さな拳を握りしめた。その無邪気な決意が、これから彼女が立ち向かう運命を少しも予感していないように見えた。






この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?