紬、電車を待ちながら湊斗と電話。(湊斗の声)「じゃ、気を付けてね」(紬)「はーい(笑って)なんか緊張する」(湊斗の声)「緊張?」(紬)「不動産屋の人にさ、こいつら同棲するんだって思われるわけじゃん。緊張する」待ち合わせ場所に向かい、街中を歩きながら電話する湊斗。(湊斗)「(笑って)思われてもいいじゃん」(紬の声)「そうなんだけどさ」ホームに電車が到着。ぞろぞろと人が出てくる。紬、車内の人混みの中で見覚えのある姿が気に留まり、目で追う。(湊斗の声)「えー、待って、こっちまで緊張してきた」(紬)「·····」紬、湊斗の声が耳に入らず、無心でその人を目で追う。電車を降りたとき、顔が見える。想(26)。(紬)「·····(えっ)」改札に向かいホームを歩いていく想。(湊斗の声)「紬?聞いてる?」紬、想の後ろ姿をじっと見つめていると、乗車を待っていた客に背中を押される。(紬)「·····佐倉くん!」と、想に向かって声を張る。気付かずそのまま歩いていく想。紬、思わず足が動き、想を追いかける。湊斗、立ち止まる。電話越しに紬が想を叫ぶ声が聞こえ、思わず電話を切る。(湊斗)「·····」紬、想を追いかけて改札を出る。辺りを見渡すが想の姿はない。(紬)「·····」高校3年生の紬、誰か見つけて、(紬)「佐倉くん!」高校3年生の想、イヤホンをとりながら振り向く。紬だと気付いて笑顔に。紬、我に返り、(紬)「あ、電車·····」待ち合わせ場所。紬を待っている湊斗。湊斗、浮かない表情でスマホを眺めている。紬、駆け足で湊斗の元にやってきて、(紬)「ごめん、ほんとごめん。ごめん」(湊斗)「(ぎこちなく笑い)いいよ。行こ」と、歩き出す2人。(湊斗)「·····なんかあった?」(紬)「ん?」(湊斗)「なんで乗り遅れたの?電車」(紬)「(言いにくい)·····」(湊斗)「·····」(紬)「·····佐倉くん」湊斗、わかっていても、ドキッとして何も言えず(紬)「あ、あの、高校の、サッカー部の、」(湊斗)「(平静を装って)うん。想がどうしたの?」(紬)「見かけて、さっき駅で、ホームで」(湊斗)「·····」(紬)「なんかびっくりして、実在してたんだ的な、ツチノコ的な?(と笑う)」(湊斗)「(合わせて少し笑って)ツチノコ」(紬)「同じ世界観にいたんだ!みたいな、ね!(湊斗)「·····話せた?」(紬)「ううん。話せない話せない。声かけたけど気付いてもらえなかった」(湊斗)「そっか」(紬)「人違いかも」(湊斗)「うん、人違いかもね」(紬)「·····(えっ)」と湊斗を見る。(湊斗)「想だったら、紬の声、気付くよ」紬、返しに困って、(紬)「·····」