「ぐわあああああああ!!」
巨体の赤黒い、複数の腕と頭部を持つ化け物。大魔王コリポレが断末魔の声と共に崩れ落ち、そして命尽きた。
「よし!!」
長い戦いだった。そう、100年にも及ぶ強大な大魔王軍との戦い。それに勝利した俺は、自ら果たした偉業にガッツポーズする。
「これでやっと帰れる。エデンに」
俺の名は
――元と付けたのは、俺が転生者だからである。
転生先の俺の名はタケル・コーガス。異世界であるエデンで二度目の生を受けた俺は、魔王アスラスを倒し異世界を救っている。
だが、戦いはそこでは終わらなかった。魔王アスラスの裏には、エデン征服を企む大魔王コリポレが存在していたのだ。
コリポレは次元を超える事が出来ないため、直接攻め込まれる心配なかった。
だが今は問題なくとも、大魔王はいずれ魔界からエデンへと乗り込んで来るかもしれない。それを危惧した俺は逆に魔界に乗り込み、そして100年という歳月をかけて奴を倒した。
――そう、これで全てが終わったのだ。
「やはり帰るのか」
背後から声を掛けられ、俺は振り返る。そこには角の生えた黒い肌の男。魔界における反大魔王軍の指揮を執っていた魔族にして、俺の相棒とも呼べる男――ガンヴィーが立っていた。
その姿は激闘に次ぐ激闘でボロボロだった。だがその瞳は力強く輝いている。邪悪なる支配者を倒し、希望という名の未来を掴んだ者の目だ。
「魔界は飯が不味くてしょうがないからな」
魔族の中には、人間である俺をよく思っていない者も多い。なので、下手に魔界に残っても余計な揉め事を起こす種になってしまう。だから俺は帰るのだ。転生先であった、異世界エデンに。
あ、因みに……飯が不味いというのはガチだ。本当に糞不味かった。この100年、それはある意味、大魔王軍との戦いより厳しい物だったといえる。まあ人間と魔族じゃ、味覚が全然違うからこれはしょうがない事だが。
「そう言われると、返す言葉が無いな」
「悪いな。後は頼んだぞ。間違っても、コリポレみたいな他者を抑圧して支配する様な王にはなるなよ」
「分かってるさ」
左手を差し出し、ガンヴィーと強く握手する。別れの握手。別に今生の分かれって訳ではないんだが、お互いのの立場を考えると、もう早々気楽には会えないだろう。
「じゃあな!」
立つ鳥跡を濁さず。握手を終えた俺は、魔法で魔界からエデンへと転移する。
――さあ、100年ぶりのエデンだ。