森から出るとクラウディアは手を離し恥ずかしそうに言う。
「殿下…申し訳ありません!無礼を働きましたわ!」
と膝を着いた。
「は?え?無礼とは?」
何かしたっけ?
「ああ!あのダモンとか言う気持ち悪いのの始末そのままにしてたことー…とか?」
あれは流石に不気味だったわ。だって生首ゴロリだし後臭いし!
「ち…違いますわ…判らないならもういいんですの…お休みなさいませ」
と彼女はテントへと潜る。
侯爵家の令嬢がキャンプするとか凄いな。
それから俺はもう一つのテントに押し込められ
レーナ嬢は自分で持ってきていた野営テントで眠るらしい。
フェリクスとヘンリックは交代で火の番をしていた。
朝日が輝き俺は外に出た。フェリクスとヘンリックはガーガー眠ってた。
この世界の朝…。何度も見たけど綺麗だな。
赤い髪を櫛でとくクラウディアの後ろ姿が朝日と共に輝いていた。
「おほんっ!おはようクラウディア!」
するとビクっと彼女は櫛を落とし慌てた。
ギギギっと彼女が振り向き
「おはようございますジークヴァルト様!すすすすぐに朝食の支度を!!」
「ええ?俺がするからいいよ」
「だだだ…ダメですわ!何度も王子にそんな!!」
必死な顔だから俺は折れた。
「うん…解ったよ、じゃあよろしくな」
クラウディアの料理ならいいか。
と思い、待った。
ヘンリックとフェリクスも起きてクラウディアが料理しているのを見て青ざめた。
「ゲッ!お嬢様が料理を!」
「まずい!手伝うぞ!」
しかしクラウディアは
「いいのよ貴方達!たまには私が!作ります!」
「いや、でもお嬢様!!」
「死人が出るぞ」
どういうことだ!?料理下手の悪役令嬢ヒロインか!?
まぁ多少下手でもクラウディアの料理だし!俺は食うぞ!
そして見るからに美味しくなさそうなものが出てきた。
「うえー…くっさ!なんですのぉこの料理!まさかクラウディア様がこんなに料理が下手なんてぇ!昨日の王子の料理とは比べものになりませんわね!」
と嫌味を言うレーナ嬢。
「レーナ嬢…文句を言うなら食うなよ!」
「そうですよ…食材達がただ死んでいるだけです」
「どう言う意味よヘンリック!」
フェリクスが無理に食べて
うえっ!と吐きそうになってる!
俺は覚悟を決め料理を口にする。
何というか…独創的な味であり世界が真っ白になった。
*
あれ?ここは?
見覚えのある神殿…。
「あーらあらまぁ!お久っ!ですねはい!」
「うわっ!女神ザスキア!!」
何で俺がここに!?はっ!まさか!
「ほほほ!婚約者の殺人料理でこちらに来たのですわねはい!」
「おおい!殺人料理とか言うなよ!死んでねえよ!」
気絶しただけだなうん。
「おい!ところで俺の能力次の満月でレベル上がんだろ?どんな能力つくんだよ?後やり方教えろよ」
「はいはい能力ね…かすり傷程度から肩凝りと腰痛を治せるようになりましたわねはい」
あんまり変わんねえええええ!!!
「ショボい!ショボいぞ!」
まるで俺はマッサージ機か!!
「あらあら!いいじゃありませんの!お年寄りに大歓迎ですわねはい!」
老人ホームでも行けってのか?
「…そうか…兵士とか疲れてたら治してやればいいのかも…でやり方は?」
「痛いところに1センチくらい手をかざして治れと心で祈りなさい。大体それです」
「簡単すぎいいい!!」
「あら複雑なのがいいの?なんなら波動拳とか出す方向で上斜め下下ボタンとか?」
「アーケードゲームじゃねぇんだよ!いいよ!簡単でいいよ!!」
「ほほほ!ではではグッバイ!これからケーキバイキングなのはい!!元取らなきゃはい!」
どこのOLの休日だよ!!
と突っ込みつつ目を覚ますとなんか柔らかいものが下に…。
「ジークヴァルト様!!目が覚めましたの??」
「クラウディア…はっ!」
俺は気付いた!ここは!
クラウディアの膝あああ!
男子憧れの膝枕あああ!
「お…俺は…」
そうだクラウディアの料理食べて気絶した。
「ご…ごめんなさい…私…殿下を殺しかけて…死んでお詫びしますわ」
と髪を剣にして自らの首を貫こうとするので必死に止めた!
「いや!俺がその!…もう少し慣れる努力をってこれも失礼だな…そ、そうだ!クラウディアにはいつも訓練を教えて貰ってる!俺からは料理を教えるってことで交換条件にしよう!」
「王子が料理など…」
「俺がシェフに頼むから!!」
「…私…戦場にばかり出ていて女らしいことが何も…申し訳ありません…」
悲しそうな顔をするクラウディアに胸が締め付けられるわ!
「大丈夫だ!クラウディア!お前がちゃんとまともに家事ができるよう俺が指南してやろう!」
「なんか凄いことになった…」
フェリクスが半目で見た。
「お嬢様は家庭教師でも逃げ出す程なのに…殿下に務まるのか?」
ヘンリックも汗をかく。
それではジークヴァルト王子!私はここで失礼致しますわ!いずれまたお会い致しますからその時に…」
とレーナ嬢は頭を下げた。
予言じみた事を言うな。やはりこいつ転生者でこの世界のことを知っている。どういうライトノベルなのかとかな。恋愛ジャンルだしやはり女性向けのか。
そもそも俺がもうお姫様みたいな扱いだしな。
どうせヘタレ王子設定ってとこだろ。
王宮に帰り風呂を済ませて俺は自室に篭ってちょっと木を彫りパーツ毎に分けて腕やら足やらを器用に彫り始めた。
この世界にはフィギュアがない!
プラスチックもねぇ!ならば木だ!
幸いに絵具はある。
俺はヤスリを使い木をスベスベにして色を塗り放置し、その間にチクチクと人形の小さな服を縫い、クラウディアの切った髪の毛を人形分取り分けて、最後に乾いた顔に瞳を丁寧に描いてカツラを被せてミニクラウディア人形を作成した!!
前世ではプラモデルとか一応SNSに上げるためにコツコツ作ってた自作フィギュアの知識がここに来て役立つとはな!まぁ塗料とかは絵具だしニスとか可塑剤がこの世界にあるかなんて知らない。多分ないか?その線の職人とかに話さないと判らんが。
うむ!このディテール!いい!
俺は早速クラウディアにプレゼントしようと思った!
「あ!でもこんなの気持ち悪く思われたらどうしよ!?」
変態とか言われたら…。
悩んだ末に俺はちょっとフェリクスの反応を見ることにした。
「どうこれ?どう?」
人形を見せるとフェリクスは目をまん丸にして固まった!!
「ここ!これは何の奇跡の力ですか?」
「いや奇跡じゃねぇし!手先が器用なだけ!そんなことよりこれをクラウディアに見せたら引かれるか?」
「ええっ!?何でですか?喜ばれると思いますしビックリなさると思います!」
「本当か!?」
よし!急がば回れだ!
俺は王宮のクラウディアの部屋に駆け出した!