「どうすりゃいいんだろう…。今更決闘はやめてくれとは言えない…、今更いきなり強くなれない!クラウディアは渡したくない!」
それにクラウディアはまた赤くなる。
もうやだ、クラウディア連れて逃げちゃダメかな?可愛い。二人でどこかの山奥で暮らそうよ!!俺農作業頑張るからぁ!!
「ジークヴァルト様は私がニコラウス王子の元に行くのは嫌ですか?」
「嫌だよ!さっきから言ってる!」
「……………」
「……………」
妙な沈黙の後クラウディアが言った。
「ニコラウス王子は闇の能力使い…。奇跡の力を持つジークヴァルト様の能力は治癒や浄化・魔物避け効果の力…正直全く勝てません…」
うぐっ!!そうだよね!!万策尽きたか?
でもクラウディアを渡したくないいいい!
「…私やはりニコラウス王子の元へ行くしか…」
「嫌だ!クラウディアを失うくらいなら死んだ方がマシだ!…そうだ!女神の力を借りてくるか!?頭でも何でも下げてやる!」
「まっ!」
と口を押さえて恥ずかしげに震えたクラウディアは
「そう言えば女神様の髪の毛…あれはどうしましたの?」
「あれかあ…あれは俺が人形にしてみたよ一応。あれは量産できないし商会に説明するのも面倒だろ?だからとりあえず作って飾っとくかくらいで部屋に置いてある」
「女神様は崇め祀れとおっしゃられましたのよね?ならばその人形に祈りを捧げて何らかのお力をお借りできないかしら?奇跡の王子なら今までのように何か効果があるかもしれませんわ!」
なるほど…でもなぁ…
「でも…そんな大した効果じゃ無かったらどうする?今までも特に大したものではないしな…」
「貴方の認識がどうであれ、私たちには充分奇跡ですわ!行きましょう!ジークヴァルト様!女神人形の所に!」
とそこでどたどた音がして
「どこぉー?ジークヴァルト様あああ!?出ていらっしゃーい!怖くないですわよおおお?」
「クラウディア嬢ー!どこですかー!あの王子にやらしいことをされてませんかー!?」
なっ!あいつら!まだいたのか!しつこい!!
「仕方ありませんわ…外から周って王子の部屋へ行きましょう!王族専用の隠し通路があり王子の部屋にも通じているはずです!」
「そんなのあったのか!?知らないんだけど!?」
「賊に襲撃されたとか万一の為に必ず王族の部屋には抜け道がございますわ!大抵は暖炉ですわね…そして出口は…外に通じています。この城の庭園のどこかにあるはずですわ!」
そこでドンドンと扉を叩く音がした。まずい!見つかった!?
「いけませんわ!私が食い止めますのでジークヴァルト様は私の髪の毛をロープにするのでお早くバルコニーから降りてください!」
と彼女は髪の毛をロープにして下へと下ろす。そして余った髪で扉を押さえた。
「こーこーかあああ!!」
ドンドンと家具が揺れる。
「お早く!」
「クラウディアは!?」
「貴方が下に降りたら私もすぐ!」
ダメだよそれ捕まるパターンだぜ!
「ダメだ!一緒に行こう!」
と俺はクラウディアを抱えた。
「な…何を!」
「飛び降りるからクラウディアは髪の毛で衝撃を和らげてくれると助かる!」
「…解りましたわ…」
「じゃあ!行くよ!?」
クラウディアはうなづき俺はバルコニーに足を掛けた。
そして勢いよく飛び降りると同時にクラウディアはドアを押さえていた髪の毛を切り、すぐ様衝撃に備えてまるで一枚の布のように髪の毛を平たく伸ばして端を周囲の木々に結ぶ。
一瞬の早業だ。ボスリとクラウディアの髪の毛の柔らかな匂いとまるで布のようなものに落ちて助かった。
「大丈夫か?」
「はい!」
すると上から二人が覗いた!
「ジークヴァルト様あああ!!」
顔がもう閻魔みたいに怖いヒロインとヤンデレ王子が
「クラウディア嬢!!何故私から逃げるのです?照れているのですね?何といじらしい!待っていてください!すぐに下へ降ります!」
しかし俺は
「おい!決闘は明日だろ!我慢もできないのか!つうか着いてくんな気持ち悪いな!」
と言うとニコラウスは
「ああ…そうであったな…虫ケラが…。私も一国の王子だ。取り乱して済まないな。今夜が最後となろうから特別に二人で別れを惜しむがいいさ。明日からは私のものだよ。クラウディア嬢…」
と彼は先程クラウディアが切り落とした髪の毛を拾っておりそれをベロリと舐めた。
クラウディアはそれを見て髪の毛をゾワッと逆だてた。
「ジークヴァルト様!!話が!!」
とヒロインは諦めず
「おい!よく見ろ!レーナ嬢!今お前とニコラウス王子は二人きりだろう!?俺たちは退散するから頑張れ!」
と親指を立ててやるとヒロインはハッ!と気付いたのか親指を立て返した!
こいつ単純だわー…。
「行こう!クラウディア!!」
とクラウディアを立たせて一緒に庭を探し回りやっと出口を見つけた。庭園の噴水近くの茂みに隠されていたのだ。
ガサガサと葉を避けクラウディアを中へと通す。
中は石造りの通路で暗い。クラウディアがマッチで火をつけて壁にあった燭台を一つ手にして火を灯して歩く。
クラウディアは言った。
「ジークヴァルト様…もし…人形に祈っても無駄でしたら…今宵が貴方とお会いするのも最期ですのね…」
「そんな…!まだ判らないだろ?それに…もし俺が負けたら…クラウディアと一緒に逃げてもいい!」
「王子が馬鹿なことを…この国を豊かにするのでしょう?ならば私のことなど忘れて他の方を王妃に…」
「ダメだそれは…」
と俺はクラウディアの空いた手を取り初めて女性の手にキスをした!
こんなキザったらしいことは前世でもイケメンしか許されないぞ!?いや今イケメンだからいいけど!
なんか本に書いてあったが女性の手にキスするのは色々意味があるらしい。
一つは尊敬や敬愛。
一つは信頼と安心。
もう一つは…特別な愛情表現だ。
もちろん特別な方だけど解ってくれたか判らない…。
チラリとクラウディアを見ると顔まで赤くなっている。顔も髪も瞳も真っ赤!
「あの…俺はクラウディアが好きだよ…もちろん政略結婚とかじゃなくて…い…異性として…」
と照れながら言うとクラウディアが
「ひっ!!」
と固まった!