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第28話 奇跡の王子わっしょい

 俺の奇跡の力はその場にいた城の者には絶対に口外するなと念を押したのだが無理だった。

 というか無駄だった。

 噂は噂を呼び、メイド達からその家族、家族から街の人に伝わり収集がつかなくなり街ではもはやお祭り騒ぎになっていた。


 奇跡の王子誕生になんか菓子やらを作り売りまくる。他所の国の者には売上になるからいいだろうが騒ぎすぎだ!大した力まだないんだって!!


 と俺が嘆いたがクラウディアはカチャリと紅茶を置き、


「こうなってしまっては仕方ありませんわ…王子が決闘など受けなければバレることもなかったのです!」


「うぐっ!」

 酷いよクラウディア…。俺一応あの5分という短さで頑張ったじゃないか!初っ端からあの目の力で動けなくなったし棘も上手くコントロール出来なくて自分に刺さったけど。

 そんでも頑張ったじゃああん!


 ユリウスくんはそれを見てクールに笑うと


「兄上こうなってしまっては仕方ありません。既に教会関係者からジークヴァルト様の奇跡の力を是非お力添えをとのことですよ?」


「うわああああ!ダメだよー!まだ全然ダメだから!骨折治したり!戦場で怪我した兵士の無くした手足生やしたり大怪我した死にかけた人コロリと治すとかそんなん無理!」


「でももう隠せないでしょ?街中の噂です」

 フェリクスも諦めろという顔をしている。


「レベル上げを一気にするしかありませんわね…やはりホワコンから宝珠を譲ってもらいましょう」

 とクラウディアが提案する。


「ホワコン…神獣!?わぁ!兄上!僕も見たいです!」


「ダメだよユリウスくん!万が一危険だったらどうするんだ!それに君はまだ馬に乗れないからダメだ!」


「ならお姉様に乗せてもらいます!」


「まぁ!ユリウス王子!流石にだめですわ!」

 クラウディアも危険だからダメと言うとユリウスくんは膨れた。クールな彼がこんなに興味を示すとはな。まぁ…なんていうかレアだもんな。


 その時妹のエリーゼが部屋に入ってきた。


「お兄様!隣国の第ニ王子リヒャルト様からお手紙と御品が届いておりますわ!


「何!?何で!まさか妹さんを下さいってやつか!?ぐぬぬ…」


「違うと思いますわ…。第一王子の件の謝罪かと…。それにジークヴァルト様が奇跡の王子だと言うことはもはや隣国にも知れ渡っているでしょう。あの場にニコラウス様の従者のレオ様もいましたし…」

 クラウディアの言うことはもっともで手紙には謝罪文が丁寧に書かれていた。


(ジークヴァルト・ゼッフェルン第一王子殿下様…。

 この度は我が兄が決闘などと馬鹿な真似をしたことを大変遺憾であります。ジークヴァルト様が奇跡の王子だとは知らず無礼にも程があり代わりにお詫び申し上げます!つきましてはお詫びの品を早急に送らせていただきました。いずれ直接謝罪に向かいます。もちろん兄にも謝罪をさせます。どうか我が国とも良好な関係を築けますようお願い申し上げます!


 アルデン国 リヒャルト・マンフレート・エーベルス)


「…弟の方は常識人みたいだが…まだ妹は嫁にやらんぞ!」


「リヒャルト様はとってもお優しい方ですわよ?」

 エリーゼがそう言うがあのヤンデレの弟だし何か裏があるのかもしれない。


「隣国にまでジークヴァルト様の奇跡の力が知れ渡ってしまったことはもう無理ですわね…。大人しく民衆に発表致します?」


「でも…俺まだ…」


「不安なら私が隣りにいますわ」

 とクラウディアが顔を赤くしながら言う。


「……っ…」


 メイドがやってきて


「ジークヴァルト殿下!国王陛下と王妃様がお呼びですわ!!」


「え?」

 俺とクラウディアは従者と共に父と母の部屋へと向かう。軽くノックの後、入れと声があり

 中へと入る。すると母のカタリーナ王妃が


「ジークヴァルト!聞いたわよ!!貴方いつの間に奇跡の力に目覚めていたの?こんな大事なこと!ああ、近々お祝いのパレードを行いましょう!各国の王族をご招待して…」

 パレード!!!そんな国の経費がかかるようなこと!


「いえっ!そんなことはいいのです!母上!国がまだこんな状態なのに!」


「こんな状態だからこそ、奇跡の王子のお披露目をしなくては!貴方自分の力がどれだけ凄いと思っているの?」


「いやだからまだ俺が使える力はほんのささやかなものであり、もうちょっと力を上げる必要があるのです!」


「ほう…どこまで使えるのだ!?」

 美形な父上アルトゥル陛下が聞いた。


「かすり傷や疲労回復・頭痛の治癒程度しか」

 と申し訳なく言うと


「ほう!それだけできれば充分ではないか!今後も力は上がっていくのだな?」


「は、はい…まぁ…」

 と俺は前世のことはともかくとして女神のこと祈りのこと…ホワコンやドラグーのことなどを話した。


「なるほど…やはり私達の子だ!お前が祖父達にでろでろに甘やかしてぶくぶく豚のようになった時はもうどうしようもない絶望しかなかったが今は希望に満ちておる!この国は変わるぞ!」

 と父が感動している。やはり豚の俺はほんとにダメな奴だったのだ。


「おい…ちょっと私の肩凝りを治してくれんかなぁ?」


「わ、私の腰痛なんかも!」

 と父と母が懇願するので俺は仕方がなく


「判りました…」

 と父と母の凝ってる部分に手を翳して祈った。すぐに俺は白く輝き二人の凝りを治していく。


「うあああっ身体が軽い!!万年肩凝りが!!こんなに楽に!!」


「腰痛もですわ!あなた!」

 まぁ両親が喜んでくれてるしいいか。


「お前の力を披露すればお前の力を借りたいという国がたくさん出てくるであろう!もはや我が国は安泰である!貧乏国など言わせぬ!」

 もはや俺自身が人間国宝みたいな感じになっちゃってるよ!

 国を潤そうと頑張っていたのに奇跡の力一つで一国が金を出してでも欲しいものだと気付く。こりゃこれから公務や遠征が増えそうだ。


「判りました…。でもまだ国内だけの正式発表に留めておきたいのです。パレードなどはいいです。もっと力をつけ人々の役に立ちたいのです」


「ふむ…判った…」


「クラウディアちゃん…ジークヴァルトの事をよろしく頼みますよ?」

 と母はクラウディアの手を取る。


「判りました!王妃様!ジークヴァルト様は私の【鮮血姫】の名の元にお守り致しますわ!」

 と言うと母はおほほほと笑い


「違うわよ!早く結婚して元気な孫を産んで欲しいわ」

 すると顔を赤くして


「は…はい…」

 と押し黙る。


「何だまだプロポーズしていないのか?さっさとしないとお前の奇跡の王子の婚約者の座を狙ってクラウディア嬢を暗殺し、自分が婚約者の座に…という不穏分子も出てくるぞ」

 と父がニヤリと笑う。


「ええっ!?クラウディアが暗殺!?」

 俺のせいでクラウディアが狙われるのか!?


「だからさっさとしてしまえばいいのです…と言ってもやはり成人まで待たねばですね。もどかしいですわね」

 この国の成人は18である。後2年したら俺とクラウディアは結婚できるのである。

 クラウディアの花嫁姿は綺麗を通り越して宇宙レベルでビックバン級に輝いてるんだろうな…。

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