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第30話 ユリウスくんの恋路

「うわっ!凄い!」

 俺はあのヤンデレ弟から贈られてきたお詫びの品を見た。馬30頭、羊30頭、豚30頭…小麦っぽいのと砂糖や塩に綺麗な布地たくさんに金塊やらがゴロゴロ。それに花の種も野菜等の種もドッサリ!


「くっっ!!ヤンデレ弟…中々やるな…」


「ですから…アルデン国とは仲良くしておいた方がいいですわよお兄様?」

 この半年で7歳になったエリーゼちゃん。

 それに9歳になったクールなユリウスくんが


「アルデン国は金鉱山を持ってますからね」

 と言う。何でもアルデンってか!?


「あのヤンデレの国がそんなに成金とはな!くそう!貧乏だからって見下しやがって!」


「素直に喜びなさい!お兄様!こんなに贈ってもらったのですから!」


「騙されちゃいけないよ!エリーゼ!聞けば第二王子は11歳だと聞く!幼女好きのロリコンじゃないか!!だめだよ!なぁ!ユリウスくん!!」」


「ううん…5歳差かあ…ううん微妙だけど確かにうちのエリーゼはまだ小さいですからね…そういうのはもっと大人になってよぉく考えるんだよエリーゼ!」

 エリーゼは半目になり


「お兄様達の方が汚れてますわね…」

 と言った。


「「ふぐっっ!!天使に汚れてるとか言われたっっ!!」」

 兄2人はショックを隠せない。


「ところでユリウスくんは好きな女の子はいないのか?」


「……………………いません」

 ちょっと何?その間は?

 これ確実にいるんじゃないか?

 目線逸らしてるよこの子!!


「ユリウスくん…何をお兄様に隠しているんだ?」


「隠してませんよ」

 今度はめっちゃ冷たく言われた。

 これ以上追求してもダメな気がした。


「そんなことより兄上…僕もホワコンの所に連れてってください!先日の兄上の奇跡の王子のお披露目で兵士達もレーナ嬢の領地に行き、護衛も増加したしいいでしょう?それに僕馬に乗れるようになりました!」


「え?嘘だ!俺だってセレドニオに乗るのにどんだけかかったと思うんだ!?」


「それは兄上が太っていたからですし…僕は元々幼い頃より僕の馬を持って時々世話したりしてましたからね。クルセリオスも僕と意気投合で背に乗せてくれて落ちないように練習していたのです!落馬の心配はありませんよ?兄上が不安だと言うなら僕の従者に後ろに乗ってもらうので」

 げっ!!こいつ!やるわ!!しかも馬の名前もカッコいいな!


「ローゼ!こちらに!」

 と今まであんまり見たことがないけどスラリとした無表情の女の子が男の執事服を着て現れた。歳は俺より下のようだった。12くらいか?


「僕の従者のローゼ・ハニッシュです兄上…。彼女は元々奴隷の身ですが、僕が街へ遊びに行った時に馬車から轢かれそうなのを助けてくれてそれで買いました。奴隷から身元も伯爵家の養子となりました」

 ほほう…なんか訳ありな子だなぁ…。紫の髪は短く男のようだが、顔は綺麗な方だ。瞳は灰色で胸は無いのかサラシでもしてるのか。ジッと見ているとユリウスが睨んだ。


「あんまり見ないでくださいね?兄上」

 クールなユリウスくんの背後から何か恐ろしいものが渦巻いている気がする。

 それにユリウスくんは年下だというのに従者の手を取り


「ローゼ…大丈夫?兄上は怖くないよ?ちょっと天然で馬鹿だけどちゃんと美しい婚約者がいるんだよ?」

 と熱っぽい視線をローゼに送っていた!


 ぎゃっ!うちの弟がまさかの男装従者に恋してる!!後俺は天然じゃないだろ?そんな…。


「でも…なんで男装を??」

 するとユリウスくんはキッと睨んだ。


「ローゼは…奴隷の時男性に酷い仕打ちを…これ以上言わせないでください!」


「すみません!!」

 なるほど…無口なのはそのせいか…。たぶんユリウスくんみたいな小さい子なら安心なのだろうなローゼも。


「判ったよ…ユリウスくん…。君が大人になったらちゃんとローゼちゃんを守ってあげるんだよ?」

 するとちょっと照れたユリウスくんは


「今でも守ってます…」

 と切なそうに辛そうに言う。

 マセガキやなぁ…。


「実はローゼにも能力はあります。戦闘向きじゃないかもしれませんが」


「そうなの?どんな?」


「ローゼ…見せてあげて?」

 とユリウスくんが言うとコクリとローゼちゃんがうなづく。すると何と!背中から白い羽が生えた!

 服は破けておらず、どうなっとんのか解らないが、出し入れ自由のようだ。


「飛べるのか?」

 ローゼはコクリとうなづいて空を飛んだ!!


「おおお!!凄い!!」

 空を一周し着陸した。


「ローゼはこの能力が現れたのは3年前で僕を助ける少し前ということになります。いろいろと言われたようです。ほら…戦争では空から来た兵士のことで国民は怖がってましたから。この羽は出し入れ自由で千切っても後で修復する為…酷いことを…」

 ユリウスくんはローゼの背中を撫でた。

 確かに奴隷であり空を飛べる能力など持っていたら酷い仕打ちをされたのだろう…しかも女の子だ…。可哀想に…。


「ローゼは一旦子供のできないハニッシュ伯爵夫妻の養女となりましたが…どうしても女の子の服を着ないのです。怖がって…。僕が贈ったドレスもダメでした…」


「だから従者に?」


「1年前にです。当初はエリーゼの従者にとする予定でしたが…ドレスを着せるというか触るのさえ怖がっていたので僕付きになったのです」


「なるほど…ドレスを見るのは大丈夫なのか?クラウディアとかエリーゼも着ているが」


「お姉様とエリーゼやお母様にはだいぶ慣れたので大丈夫ですよ」

 とユリウスくんは言う。

 ローゼちゃんもユリウスくんには心を許しているしまぁ自分より小さいしな。

 だが、俺を見ると怯えたように視線を外した。


「ローゼ?大丈夫だよ?兄上はアホで剣の腕も良くないし安心して?それに記憶失って前のように酷い発言はしないから」

 もはや見たことないくらい優しい声音で俺をアホとか言ってる弟がいるけど!!それに前の豚俺はローゼちゃんに何言ったんだよおおお!!

 まぁユリウスくんが真剣なのは判ったよ。


 そこにクラウディアがやってきた。


「クラウディア!!寝てなくて大丈夫なのか!?」

 クラウディアはニッコリして


「はい!女神様の毒消のおかげですっかり回復いたしました!あ、私は本物のクラウディアですわ!」

 と髪を伸ばしてみせた。

 あんな汚い女神の涙でも一応元気になったクラウディアにほっとした。


「良かった!クラウディアが元気になって本当に良かった!!」

 と俺が笑うとクラウディアも照れて笑った。

 それを見ていたローゼは何故かギュッとユリウスくんにしがみつきユリウスくんも赤くなっていた。

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