夜中まで頑張って祈りと宝珠の浄化をした俺は、終わると疲れてバタリと気絶するように眠った。
んでまた例の神殿に来る。
「お疲れ様ですはい!」
いつもの女神だがどことなく洒落込んでいるな?
「ふふっ…気付いたわね?私の魅力に!実は色っぽい下着も買いましたはい!今から合コンでありますはい!」
知らねーよ!ババア…。
「ババアではなあい!」
とまたぶっ飛ばされる。激突しても痛くはないけど。
「んじゃ、チャチャチャとレベルの報告をしましょうねはい!」
俺は壁に突き刺さったままだらりと手を上げた。
覚えた奇跡の力は
1.軽度の火傷が治る
2.霜焼けが治る
3.ひび割れ・ささくれが治る
4.水虫が治る
5.胃痛・腹下しが治る
6.関節痛が治る
7.疲れ目が治る
8.耳鳴りが治る
9.毒・麻痺が治る
10.軽い骨折・ヒビが治る
「やっぱりショボいじゃねーか!!水虫とかいい加減にしろや!!」
「何を言っておる!毒や麻痺や軽度骨折まで上がったじゃない!あの汚ったない宝珠でもそこまで上がったのだから感謝なさいはい!」
と女神は言う。まぁ確かに…毒や麻痺は助かるな…。こないだみたいにクラウディアに毒を盛った輩が現れても助かる。
すると女神はシュシュシュっと香水を吹きかけ
「それでは私は時間なので行きますねはい!ここからは女の戦が始まるのです!はい!」
と気合いを入れていた。
「頑張ってくれ…」
力なく笑うと視界は白くなる。
同時に目を開く。
視界に美少女が心配そうな顔を覗かせていた。
「まぁ!目が覚めましたのね?ジークヴァルト様!良かった!昼まで目ざめないので少し心配してましたわ!」
俺を心配とか可愛いな!クラウディアは本当に可愛い!
しかし…
「は!昼!?俺はそんなに寝ていたのか!!ごごごごめん!朝の訓練をさぼっちゃったよ!ええとクラウディア人形の売り込みも…それから…」
するとクラウディアはゆるゆると首を振り言った。
「ジークヴァルト様…今日は全部お休みしましょう?お疲れなのですわ?だから昼まで眠っていたのでしょう。祈りを捧げて浄化して…」
「で…でも…休んでいるわけには…」
するとクラウディアの綺麗な手が俺の頰を撫でた。思わずドキッとした。
「ジークヴァルト様は…頑張り過ぎです!たまにはお休みください!本日はジークヴァルト様の休日ですよ?のんびりとお過ごし下さい!城の者にも伝えておりますわ」
この婚約者の気遣いに俺は嬉しくなる。そう言えばこちらに転生してから半年俺はダイエットや訓練にレベル上げ、クラウディア人形、夜会…なんかもういろいろと頑張り…王子には休日なんかないだろと思うし、貧しい民はそれこそ休んじゃいないんだろう。
「俺が王になったら…国民にも休日を作りたい。俺が転生する前の世界では一般人…庶民にも毎週2日と祝日には休みがあったしゴールデンウィークって言う長い休みだってあったんだぞ」
と言うとクラウディアは
「そうですか…。実現できるといいですわね…。でも今日はジークヴァルト様のお休みですわ。好きに使ってくださいまし」
とクラウディアは微笑む。
思わず抱きしめたくなる顔をするなよ!
「あのっ!じゃ…じゃあさ…。そのぅ…クラウディア…暇なら俺と…お忍びでデートして下さい!!」
と俺は真っ赤になり言った!!言ってやったわ!!女子とデートすらまともにしたこともない俺が!!
「あの…デートとは何でしょう?」
キョトンとするクラウディアにああ、そうかと説明する。
「ででで…デートとは…その仲のいい男女が…恋人などが二人でどこか…この世界なら街かな?…お出かけすることだな!」
「それが…デート…」
クラウディアも混乱して赤くなる。
「嫌ならいいんだよ?クラウディアの都合もあるだろうし女の子は身支度もあるだろうし…ってあっ、お忍びだしな…俺も庶民の格好をしなくては…」
「庶民の格好で…お出かけ…」
侯爵家の令嬢が庶民の格好など失礼だったかもと俺はやっちまったか?と後悔した。
「やっぱり無理かごめんなさい。大人しく庭で畑でも耕しておきます…」
「そっちの方が疲れません?…私なら何とかなりますわ…メイドに服を借りてきますわ…それから行きましょう!」
「じゃあ…デートしてくれるの?」
「え…ええ…ジークヴァルト様のお休みですから…付き合えと言われれば私は逆らえませんわ」
「あっ、いや…だからそういうさあ、命令じゃないんだよ?クラウディアが行きたいか自分で決めるんだ…。もし嫌な相手なら断っていいんだ」
するとクラウディアは赤くなり
「嫌ではありませんわ!庶民の格好なんてしたことはないのですが…どうせ今王都にいるのですからすぐに街歩きは可能ではありませんか」
と言われてああ、そう言えばここは王宮じゃなく王都の中にあるタウンハウスじゃないかと気付いた。すぐにでもデートできる状態だった!
「じゃ、すぐに準備して行こう!いいか!?従者なんて連れて来ちゃダメだぞ?庶民だから俺たち!変装すんだから!…っとそう言えばあのエロ狐…いやコンちゃんはどうした?」
「コンチャーン様は起きて朝食を取られた後…その…また娼館へ行かれましたわ…鼻唄まじりに」
「………なんて汚れた神獣だ!クラウディアあんなのの側には近寄らない方がいい!」
「と、とにかく準備して参ります!後ほど!」
とクラウディアは一旦部屋から出て行った。入れ替わりにフェリクスが入ってきて事情を説明すると庶民の服を手配してくれた。
俺の庶民服はとりあえず目立たなくて地味で茶色のちょっと長いシャツ…チュニックと言うらしいを着て腰の辺りをベルトを閉めておく。皮のズボンを履き庶民様の革靴を履いた。上着代わりにウールのマントを羽織っておく。
仕上げに髪をボサボサにして丸メガネをかけておく。もはや前世でお洒落してデートは無理だった。というかダサくなってるし!もはや演劇部のチョイ役感あるわ!!
案の定クラウディアも赤い髪は頭巾で隠して白灰の膝まであるワンピースを腰のベルトをつけ上から茶色のショールを被りこれまたダサい。
そう…この国は復興途中とはいえまだまだ貧しいのだ!そこらのライトノベルのようにキャッキャウフフなんてできるわけねぇ!
「うふふ…こういう服を着るなんて思いませんでしたわ!私なんだか楽しくてはしゃいでしまいますわ!」
ウフフしとるがな!!
「そ…そうだなぁ…。うん、行こう!」
フェリクスとヘンリックがタウンハウスの玄関まで送り、
「言ってらっしゃいませ!殿下…クラウディア様!ブフー…!!」
と明らかに堪えきれない笑いで見送った。
お前後で締める。
丁度その頃タウンハウスにユリウスくんとローゼちゃんが残りの兵士と共に帰ってきて玄関から出てきた俺たちを見て彼のクールな顔が歪んだ。いや、ひくついていた。
「兄上…お姉様…。帰った側から笑わせないでください!クフッ!」
君もか!ユリウスくん!!
「うるさいね!俺はもう行く!今日は夕方までクラウディアと貴族辞めるから!」
とさっさとハウスを出て街へと出たのだった。