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第2話

数日後、近所の小学生がその姿に気づいた。


「お母さん、ツバメが帰ってきてるよ!」


母親は目を細めて言った。「あの家、今年も巣を作ってくれたのね。」




それをきっかけに、誰も寄りつかなかった家の前に人が集まりはじめた。


誰かが草を刈り、誰かが壊れた雨戸を直し、誰かがツバメの様子を日記に書いた。


ツバメは何も知らないまま、ただ雛たちに餌を運び続ける。けれどその姿は、忘れられていた場所に小さな命の炎をともした。




やがて夏が過ぎ、雛たちは大空に羽ばたいていった。


ツバメもまた、空高く舞い上がり、遥か南を目指す。


けれど、来年もきっと、この家に戻ってくるだろう。


その時、もう一度誰かが、また微笑んでくれるように。

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