「えっ?」
(他の部署の人たちは問題社員が混ざっていようと何だろうと、基本的に個人個人が持ってきているのに……。営業課だけ何で特別扱い?)
確かによその部署に比べたら接待などの絡みで経費の計上が多いけれど、それにしたって。
「戻ったら私からも
まくし立てるように一気に言って
クスッと笑いながら可愛いワンコを振り返ったら、ワイシャツのボタンを留めてネクタイをキチッと整えている
(ホント、基本的には素直でいい子なんだけど)
手のかかるワンコのような後輩は可愛いけれど、他部署なのだし、もう自分
***
ジリリリリリー!と言う、まるで目覚まし時計のようなこの音は、
「ねぇ
ベルが鳴ると同時、羽理はパーン!とエンターキーを叩いてデータを保存したと思しき
会社ではキリリと
女子力なんてどこかに置き忘れて久しいので、入社して以来手作り弁当なんて作ってきたことがない。
ランチは大抵コンビニ弁当か、会社に出入りしている仕出し屋の弁当か、はたまた近場の飲食店へ仁子と一緒に食べに行ったりしている。
長い付き合いでそれを知っている仁子が、いつもの調子で「せっかくだし一緒に食べに行こうよ」と誘ってくれたのだけれど。
「ごめん、仁子! 実は私、今日はお弁当持ってきてて……」
「嘘でしょ!」
「嘘じゃないよぅ」
「もぉ! どこで買ったヤツよ? 消費期限、夜までとかじゃないの!? 確認してみなさいよ!」
買ってきた品だと決めつけている仁子の様子に、羽理は何となく意地になってしまう。
「残念ながら
言って、どこか得意げに
「やけに渋い包みね!?」
朝、羽理自身が華麗にスルーした部分を、仁子が的確に拾い上げてきたから。
羽理は、不合理にも(裸男め!)とたまたま通りかかった
***
昼休憩の合図音が鳴ったと同時。
(ちょっと覗くだけだ……)
そう心の中で誰にともなく言い訳をして、部長室から何気ない風を装って財務経理課のフロアへ出たと同時――。
その様に何となく(
心の中で思わず、(バカ! どう見ても
それと同時、
こちらへ気付いたらしい羽理からキッと睨まれてしまう。
「なっ」
――何故そこで俺を睨む!
(そもそも、お前、今朝弁当渡した時は包みのことなんざ、全然気にしてなかっただろ!)
俺の愛を
と、そこで
「あれぇ? ひょっとして
瞳を目一杯見開いた
何となく
「すみません、課長。また誘ってください」
羽理からの
「いや、
なんてつぶやいてしまって。
「えっ!?」
三人から一斉に注目を浴びてしまった。
「何で
羽理にプンスカされた
「せ、せっかく弁当箱とか用意したのに作らないとかもったいないだろ!……って思った、だけ……だ。ふ、深い意味は……ない」
と、机上にポツンと置かれたモスグリーンの包みを指さして、しどろもどろ。どうにかこうにかそう思った理由を述べたのだけれど。
「えー。羽理、わざわざお弁当箱、買ったの?」
「か、買ったわけじゃ……」
自分が作ったわけでも弁当箱を用意したわけでもない羽理がオロオロするのを見て、(それは忘年会のビンゴ大会の景品だぞ、荒木)とふふん、としたと同時、『あ!』と思った
そう、あれは
鈍そうな女子社員二人はともかくとして、一見のほほんとして見えるがその実やり手な
それに――。
「もぉ、煮え切らないわね! どんなお弁当箱なのか見せてみなさいよ!」
(マズイ……)
包みの下から姿を現したのは白木の曲げわっぱで。
「えっ!? 何で!?」
仲の良い同僚のことを
「ちょっと羽理! あんた、いつから
白木のふた部分。
(ウリちゃんイメージのステッカーだぞ? 可愛いだろう!)
と言うのはもちろん建前。
ニブチンの羽理に、食べる直前。少しでもいいから自分が作った弁当なのだと意識して欲しかっただけ。
そう。
言うなれば、