蒸気を上げる身体を冷ます為、冷たく心地いい空気を肺に流し込む。
「ごめんやすぅ……東条はん!?」
丁度夕飯を一緒に食べようと訪れた紗命が、瀕死のスライムの如くグデグデになった彼に驚き、駆け寄る。
「どないしたん?凄い汗やで?具合悪いの?」
「黄戸菊?あぁ……悪い、気付かなかった。特訓してただけだから心配すんな。……ご飯持ってきてくれたのか?」
「う、うん」
「ははっ、ありがとな。これじゃぁ完全に引き籠りだな」
怠い身体を叱咤し、「よっこらせっ」と立ち上がる。
「ぃつつ。悪い、先シャワー浴びてくるから少し待っててくれ」
「え、あ、うん。分かった」
痛む頭を抑えヨタヨタ歩く彼を、ほけー、と見つめる。
「あ、ちょい――っ……」
彼の姿に気付き言及しようとするが、そこで背中に刻まれた大きな裂傷が目に入った。
肩口には無数の歯形もあり、正に修羅場を潜り抜けてきた身体だ。
紗命はかける言葉も忘れ、熱っぽい視線を只向けるだけだった。