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第38話


 ――「凄い量ですね、」


 ノックに鍵を開け、佐藤は彼等の姿に目を見張る。


 階段の下に物資を下ろし終え、


「俺まだ用事あるんで」


 東条はもう一度扉を出ようとする。


「用事?」


「ズボン欲しいんですよ」


「「「あぁ……」」


 その切なる願いに同情せざるを得ない二人。


「分かった。俺も行こう」


「了解っす。次行くとこちょっとヤバいかもしれない場所なんで、筒香さんもリュックは二つまででお願いします」


「葵獅でいいぞ。何処に行くんだ?」


「八階です。奥のレストラン街にモンスターがたむろしてるかもしれません。様子見ておきたいし、スポーツ用品店もその階なんすよね」


「分かった。慎重に行こう」


 再び中へ入った。



 ――「……見えます?」


「あぁ、あれはヤバいな」


 一番端の階段を下り、徐々に目的地へと近づく二人。以前より強化された彼等の視力は、ずっと奥に見える悍ましい光景を捕えていた。


 緑色の身体が蠢き、レストラン街を埋め尽くしている。ここから見えるだけでも、数は優に四十を超えている。


 東条は感じていた。その中にヤバいのが複数いる。数は分からないが、恐らく今の自分では勝てない。


「東条、急ごう」


 気付けば、握りしめた手が白く変色するほど力を込めていた。葵獅に促され、目についたラックに掛かっている品物を手当たり次第に詰め込む。


 距離は充分に開いているが、音を立てないよう最善の注意を払わずにはいられなかった。


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