――「紗命とは上手くやれているか?」
「そう思いたいっすね。……色々打算的に動いてるみたいっすけど、まぁ美女に振り回されるなら本望です」
二人はキャンプ用のリュックを幾つも拝借し、雑談しながら必需品を詰めまくっていた。
東条は消化のよさそうな物や、オムツを物色する。
「ハハハっ、君も大概だな」
「女性は黒に近いグレーくらいが丁度良いんすよ」
「間違いない」
一つ気付いている事があるとするならば、昨日の食事会は、あの親子に対する自分の同情心を誘う目的があったのだと思っている。
娘達は元気そうに見えたが、母親は見るからにやつれていた。きっと食事を殆ど摂っていないのだろう。
近い内中に行くことが予想できる自分の同情心を煽っておけば、その時物資を補給してくれるかもしれない。
そんな考えが見えてしまうのは、自分の心が汚すぎるせいか。
「……ま、どうでもいいか(ボソ)」
「何か言ったか?」
「そろそろ詰め終わったし、一旦戻りません?」
「そうだな」
葵獅は前後左右、加えて片手に四つずつリュックをぶら下げて立ち上がる。
東条は四つで戦える限界だというのに。
「凄いっすね」
「すまんが咄嗟の戦闘は任せていいか?」
「まぁ、そりゃそうっすよね」
体積が膨れ上がった二人は、収穫物を手に拠点へと戻っていった。