――「……落ち着いたか?」
「……ぅん」
胸から離れた少女の顔は、泣いていたからか、若干赤らんでいる。
「……」
無言で薬を塗り包帯を巻いていく彼女に、何を話していいかも分からず、なすが儘にされる東条。
そのまま何分か経ち、
――「……私ね、……」
先に沈黙を破ったのは彼女だった。
「……本当は、他人とかどうでもいいの」
「……」
「……私と、大切な人……私を守ってくれる人がいれば、後はどこで誰が死のうがどうでもいい。
……さっき知り合った奴の為に命を懸けるなんて、クソくらえよ。
………………でも、私が仲間にした人達は、進んで他人を助けに行く。
…………正直、きつかったわ。
……私以外、皆が光って見える。
私だけが、間違っているように思えてくる……。
他人の為に自分をなげうつのが善で、自分の為に他人を利用するのが悪だと、……」
「……そん「そんな時、……桐将が現れたの」
「最初は、邪魔にしかならない奴だったら、傷の悪化に見せかけて殺してやろうと思ったわ」
(……ヒェっ)
「……でも、違った。面白くて、すぐに皆とも仲良くなって、……何より強かった。
……私は、桐将を手に入れる事にしたの。
……私の盾として。
幸い近づくのは簡単だったわ。可愛い女の子にデレデレだったしね、ふふっ」
(……顔に出てたのか?)
「……桐将といる時は楽しかった。
一緒に話して、一緒にご飯食べて、一緒に笑って、
……不思議と、桐将といる時は心が窮屈じゃなかった」
(……シンプルにうれしい)
「……何日も桐将と一緒にいてね、……それでね、私気付いたの、……
あぁ、この人は私と同類なんだ、って」
「……」
「だから、一緒にいて窮屈じゃないんだって。
それで、もっと桐将が欲しくなった。
ずっと私の傍で戦って欲しいって思った。
恋とか愛とか分からないけど、そんなのじゃなくて、私の為に、私の為だけにっ、戦って欲しいって思ったの。
……ふふっ、……引いた?」
――こちらを見る紗命の目は、狂気に蕩け、口は甘ったるいほどの恋慕に緩んでいた。