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第63話

          §



 今までと何も変わらぬ七日間を、確かな意味を持って過ごしていく。


――鍛錬はより深く。



――魔力を溜め、外に出す、もう一度溜め、外に出す――感覚に慣れてきたら、溜めと出しの間を無くし――


「ぶはぁッ」


いつの間に止めていた息を吐き出し、どっと汗がふきでる。


隣で、ぶっ倒れるまで付き合ってくれる紗命から飲物を受け取った。


「あんがと、――ぷはっ……むっず……」


今、この領域に手を伸ばせるのは彼一人。


しかし、細かな魔力操作に、魔力を逃さず全身に巡らせる集中力、それらを継続させる精神力。


一つ一つが高難度の技。彼とて一朝一夕でできるものではない。



ホブゴブリンとの戦いでは、身体強化の時間制限に死の気配を見た。

今やっているのはその制限を取っ払う鍛錬だ。


習得した暁には、発動しさえすれば絶えず体内と体外の魔力が循環することになる。

一定の魔力が常に『ある』状態になるのだから、溜めも減りも考えなくて済む。


いかに楽をするか、という思考から生まれた技の極地。


技術の進化とは、常に楽から生まれるものなのだ。


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