雲ひとつ無い真っ青な空。数羽の雀が飛び交っている。
遠くでクラクションが鳴る。バスや乗用車の走る音が響く。
ホームでは発車ベルが鳴っている。
咲夜はいつも以上におしゃれをして、駅前のモニュメントの前で
音楽を聴きながら悠を待っていた。
咲夜の服装は、ピスタチオカラーのアーガイル柄のセーターにギャザーワイドデニムを着ていた。
遅れてやってきた悠は、メンズスタイリッシュのベージュを背景に黒の広めのチェック柄、ルーズフィットワイドレッグジーンズを着ていた。
お互いに服装を見て目を丸くして驚いた。
「めっちゃ、可愛いね、それ」
「え、本当? ありがとう。てか悠の服って、まるっきりメンズの服じゃん。
超かっこいいんだけど」
「そう? かっこいいって言われるの悪くないかな。ありがとう。そういや、この間、モールに行ったんだけどさ、女子トイレ行ったら、ジロジロ見られたよわ。こういう身なりしてるじゃん。多分、トイレ間違ってるよとか思ったんだよね」
咲夜は、急に変な汗をかいてきた。ものすごくかっこいい悠の隣にいていいのかなと思った。彼氏ができたみたいだ。
でも違う。女友達なのだから。
「え、あのさ、私、隣いても大丈夫? 釣り合ってる?」
「は? 何の話。隣にいていいに決まってるじゃん。何言ってるのさ。てかトイレの話はスルー?」
「ごめんごめん。だって、何かドキドキしてさ。悠、かっこいいから。私みたいなへなちょこと一緒にいるのが申し訳ない」
「へなちょこ? 何言ってるの、咲夜。ウケるんだけど……」
悠は笑いが止まらない。咲夜の手をつかんで、まるで彼氏彼女のデートみたいに歩いた。まんざらでもない咲夜は嬉しくて頬を赤くしていた。
「と、トイレの話なんだけど、それ、誰でも間違うと思うよ。悠、女子に見えないし、かっこいい男子だもん。そりゃぁ、周りの人凝視するよ」
「そお? でもそれ見てると面白いんだよね。ちがうぞ? 性別って。女子だからって思っちゃう」
「楽しそうで何よりだけどさ。悠ってそういう気持ちではないんだよね」
「え?」
「男子になりたいとかではないんでしょう?」
「うん、自分でもよくわからないけどね。違うと思うよ。男子は好きになれないけどさ」
「ふーん……まぁ、いいか。かっこいいから」
「ん??」
悠は意味がわからなかった。でも咲夜の隣にいて、とてもリラックスしていた。はたからみたら、 本当に男女がデートしているようだった。
ご機嫌のまま2人はお互いのお気に入りアパレルショップに向かった。
歩行信号機のかっこうが鳴った。横断歩道の人が移動し始めている。