ふと咲夜が廊下を歩くとすれ違い様に悠が手を降ってきたが、恥ずかしくなって無視してしまっていた。
翼は慌てて、ほらと声をかけたが、遅かった。
悠はショックを受けて、うなだれていた。
休み時間の終えるチャイムが鳴っている。
咲夜がいいわけする時間もなかった。
スマホで急いで弁明するように咲夜は悠に謝罪スタンプを送った。大丈夫というスタンプが返ってきた。安堵した。
「咲夜、案外、悠はナイーブで傷つきやすいから気をつけてね」
「う、うん。気をつけるよ」
結局のところ、咲夜と悠は、周りからも認められるカップルとして、付き合うことになっていた。
まだ告白さえもしてもないし、されてもないが、そういう雰囲気に成り立ってしまった。
女同士の友達で集まっているときもいつの間にか、若いお二人でと2人きりになることもある。
「なんか、最近、みんなしてそういう雰囲気だよね」
「だよね」
「別に問題ないけど、わたしは。咲夜は?嫌じゃない? 大丈夫?」
屋上に続く階段の踊り場で2人話していた。
「うん。平気だよ。悠と話するの楽しいし」
「マジで?」
「う、うん」
「よかった」
悠は、心の底から喜んでいた。目と目が見つめ合う。ぎゅっとハグされた。ぎゅっと胸が締め付けられた。両肩に手を置かれて、悠の顔が斜めに倒れた。柔らかいものが唇に当たる。あたたかくて安心した。
「咲夜、好きだよ」
「う、うん」
耳まで顔を赤くした。恥ずかし過ぎて、まともに悠の顔が見れなかった。
「咲夜は? どう思う?」
「私も」
「本当? 良かった」
ずっと手を握られていた。悠の手は優しくてあたたかくて守ってくれそうだった。ほっとした。隣同士、階段で話すのが楽しかった。話題がずっと尽きなかった。
昼休みのチャイムが鳴るまでずっと話していた。