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第11話 階段の踊り場

ふと咲夜が廊下を歩くとすれ違い様に悠が手を降ってきたが、恥ずかしくなって無視してしまっていた。


翼は慌てて、ほらと声をかけたが、遅かった。


悠はショックを受けて、うなだれていた。


休み時間の終えるチャイムが鳴っている。


咲夜がいいわけする時間もなかった。


スマホで急いで弁明するように咲夜は悠に謝罪スタンプを送った。大丈夫というスタンプが返ってきた。安堵した。


「咲夜、案外、悠はナイーブで傷つきやすいから気をつけてね」


「う、うん。気をつけるよ」


 結局のところ、咲夜と悠は、周りからも認められるカップルとして、付き合うことになっていた。

まだ告白さえもしてもないし、されてもないが、そういう雰囲気に成り立ってしまった。


女同士の友達で集まっているときもいつの間にか、若いお二人でと2人きりになることもある。


「なんか、最近、みんなしてそういう雰囲気だよね」


「だよね」


「別に問題ないけど、わたしは。咲夜は?嫌じゃない? 大丈夫?」


屋上に続く階段の踊り場で2人話していた。


「うん。平気だよ。悠と話するの楽しいし」


「マジで?」


「う、うん」


「よかった」


 悠は、心の底から喜んでいた。目と目が見つめ合う。ぎゅっとハグされた。ぎゅっと胸が締め付けられた。両肩に手を置かれて、悠の顔が斜めに倒れた。柔らかいものが唇に当たる。あたたかくて安心した。


「咲夜、好きだよ」


「う、うん」


 耳まで顔を赤くした。恥ずかし過ぎて、まともに悠の顔が見れなかった。


「咲夜は? どう思う?」


「私も」


「本当? 良かった」


 ずっと手を握られていた。悠の手は優しくてあたたかくて守ってくれそうだった。ほっとした。隣同士、階段で話すのが楽しかった。話題がずっと尽きなかった。


 昼休みのチャイムが鳴るまでずっと話していた。

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