学校の昇降口の靴箱の扉に手を伸ばした。
後ろから声をかけられた。
「咲夜、おはよう」
挨拶したのは悠だった。先週の金曜日に送ったラインに
既読がつかなかったのが気になった。怒ってないか心配になった。
「あ、悠。おはよう。あのね、先週はごめんね。ラインの返事と1日1回電話するって言ってたのにできなくて」
「ううん。気にしないで。お互いに忙しい時があるのに1日1回の電話はよく無かったかなって反省してたところ。てか、先週さ、お腹痛くて、ほら、月ものが来て、苦しくて横になっていたんだ」
「具合悪かったんだね。ごめんね、気づかなくて……。電話、1日1回でもいいよ? それか休みの日の日曜日にするとか? あ、でも、今度悠が忙しい?」
「……全然。本当言うと不満だった。咲夜から連絡来るのずっと待ってた。 考えてくれてないのかなって思ったら不安になって、嫌がらせ……ごめんね」
「え、嘘」
咲夜は両手で口を押さえた。悠がそこまでして、自分のことを気にかけてくれたとは思わなかったからだ。素直に嬉しかった。
「こんなのやだよね。気をつけるね。咲夜のこと大事にしてたつもりだったのに。お詫びに今日の帰り、マックおごらせて」
「う、うん。パンケーキ!!」
「え? 早くない? 遠慮しない?」
「えー、おごってくれるんでしょう。私、パンケーキ好きなんだ」
「いや、わかるけど。まぁ、いいや。んじゃ、一緒にいこうね」
悠はそっと咲夜の手を握った。細く白い肌がサラサラしていた。
「ハンドクリーム塗ったんだ。シトラスの香りするよ」
咲夜は悠の鼻の近くまで手を運んだ。王子様のように軽く手に口つけた。
一気に恥ずかしくなる。顔を真っ赤にさせた。
「あ、ごめん。嫌だった?」
「ううん。びっくりしただけ……嬉しいよ」
咲夜はまるで宝塚の王子様と接してるようでドキドキが止まらなかった。
「教室行こう。遅刻するよ」
「うん」
咲夜は悠の後ろを着いて行った。その様子をちょうど靴を履き替えていた琉偉がしっかりと見ていた。明らかに女子だよなと目を擦って確かめた。後頭部をボリボリとかいて、教室に向かう。
(咲夜は、ああいうのが好みなのか? てか、彼氏なのか? わかんねぇな)
本鈴のチャイムが鳴った。
風が強く吹いて、落ち葉を揺らした。