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第22話 制服デート

「悠、ごめんね、お待たせ」


 昇降口前、お互いに部活動を終えて、待ち合わせていた。先に終わっていたのは悠の方だった。弓道部に所属していた悠は、いつもより参加部員が少ないこともあり早々に切り上げていた。


「ううん、全然。待ってないよ。スマホで暇つぶしできるから」


 いつも履いていたスカートではなく、ズボンになっていたため、本当に男子そのものの悠に咲夜はドキドキが止まらなかった。自然の流れで腕を組めるようになる。周りの女子からは裏ましがられる。同性であることで女子の気持ちがわかるというのは、すごくありがたいことだった。異性だと噛み合わないことも合致することがある。


「ねぇ、悠。今日、行きたいところがあるんだ」


「え? どこ?」


「あのね、最近できたメロンクリームソーダの喫茶店。Instagramで流行っているみたい。1番上にクマのプリンが乗ってて可愛いの。ほら」


「あ、それ、見た。良いよね。行きたいと思っていたよ。ありがとう」


「う、うん。悠と一緒に行きたくてさ。ずっと考えてたんだ」


「あ、そうなんだ。あれ、咲夜、昨日夜にコンビニとか言ってた?」


 不意に出た質問。咲夜のスマホに登録していたGPSのアプリをずっと見ていた悠は、ついつい聞いてしまった。夜にコンビニは危ないなと感じたからだ。


「え、なんで知ってるの。ラインで教えてたかな? そう、呼び出しがあってさ。翼から電話もらって会ってたの」


「あ、え、うん。言ってたよ。確か。翼に会ってたんだね。大丈夫だった?」


「何か、彼氏と喧嘩しちゃったんだって」


「あー、そういう感じか。それは大変だね」


「男子と女子でわかってくれる部分って違うじゃない? 私は悠が女子だから一緒にいてすごく安心なんだ」


 悠はその言葉が逆に傷ついた。本来ならば、男として接したい。でも心と体は別になっている。煩わしい毎月訪れる痛みと苦しみ。ため息をついた。

 本当の気持ちはきっと咲夜にはわかってくれないんだろうなと落ち込んだ。


「悠? 大丈夫?」


「うん、大丈夫。喧嘩、咲夜とまだしたことないからしてみたいな。喧嘩するとお互い分かり合える気がするんだよね」


「そうかなぁ。私はできれば喧嘩したくないよ。平和主義者だから」


「あー、そっか」


 考えが少し違う。ズレを感じた。


「でも、咲夜に喧嘩振られても、きちんと向き合えるって信じてるからね。私は」


「あ、うん。ありがとう」


 少しうつむいて、2人は喫茶店に向かった。新しくできたお店はものすごく混んでいたが、並んでいる間もなんでもない話をして盛り上がった。


 楽しすぎて時間があっという間にすぎていった。



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