咲夜は家に着いてから悠の着信履歴を確認した。
着信だけじゃなく、ラインのスタンプも連投されていた。
文字とともに可愛いクマのイラストが絵が描かれていた。
《お疲れさま》
《今どこ?》
《家着いた?》
《返事なくてさびしい》
《ぷんぷん》
と最後は怒っているイラストになっていた。
勉強机にバックを置いて、スマホをじっと見つめる。
既読さえもできず、ずっと電車で琉偉と夢中でおしゃべりしていた。
咲夜はため息をついて、改めて、悠に電話をかけた。
その頃、悠は、息を荒くして家に着いて着ていた真っ黒い服の
ファスナーをおろして、部屋着に着替えようとした。
ズボンのポケットに入れていたスマホを取り出すと咲夜名前が
表示されていた。
嬉しくてすぐにスワイプした。
「咲夜? 家にいる?」
『悠、今家にいたよ。ごめんね、着信もラインも気づかなくて今見たの。
あと一緒に帰れなくてごめんね』
フェイスタオルで汗をかいた顔を拭きながら悠は答えた。
「ううん。大丈夫。部活あるって教えてくれてたでしょう。それは構いないから。気にしないで」
『本当、悠という人がいるのに私は、着信に気づかないなんて酷い人だよね……ごめん』
「そ、そんなに謝らないで。大丈夫だって。でも、今日、帰り暗い時だったんじゃない? そっちの方が心配だよ」
『あ、そうなのよ。いつの間にか外が真っ暗になっちゃって、怖かったよ。
悠と一緒に帰りたかったぁ』
「えーいつでも一緒じゃん」
『え?』
「だから、心配だったから後ろから着いていこうとしたんだけど……」
『………』
悠の言葉に咲夜は息を飲んだ。しばし、沈黙が続く。 怖い思いをしたのは、悠が追いかけてきてたからなのかと帰り道を思い出す。
『悠、今日,私の後ろ着いてきてた?』
「うん、そうだよ」
平気なトーンで返事をする悠に寒気がした。追いかけてきたのなら、
なんで声をかけてくれなかったんだろうと不思議だった。
『ちょっと、待って。今日、部活は?』
「今日、部活休みだった。制服、休みだったけど、部室で私服に着替えた。ズボン汚れててさ。洗ってるから、スカートから早くズボンに着替えたかったんだ」
『真っ黒な服?』
「うん、そう。今、その服脱いでたよ。想像しちゃだめだよぉ」
悠のテンションについていけなかった。あんなに怖い思いをしたのは初めてだ。なんだか、悠は別な一面があるのだと感じた咲夜だった。
ひやっと恐怖を感じた咲夜に悠が話し出す。
「ねぇ、咲夜。琉偉先輩のこと好きなの?」
悠の声のトーンが急に低くなった。怒っているのではないかという殺気だった空気だ。
「え……。す、好きなわけないじゃん」
今はその言葉をいうことしかできなかった。
「そ、そうだよね。私の予想違いだったわ。それが聞けて安心した」
かなりテンション高めで返事をする悠に咲夜はなんとも言えない気持ちになった。琉偉と行動をともにするのはしばらく控えようと決めた。
電話を終えた咲夜は、制服姿のままベッドの上に寝転んで、体は疲れているはずなのに何度も寝返りをうつが、悠のことがあって眠ることができなかった。