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第26話 執着

咲夜は悠のストーカー気質があることに恐怖を感じていた。頼んでないのに、帰り道後ろから黙って着いてくるのは怖くて、一緒にいても大丈夫なのかと心配になった。


教室の机にバックを置いて、身震いをした。


「あ、咲夜、おはよう! 昨日、琉偉先輩と一緒に帰ったんでしょ? 噂になってたよぉ。浮気かな?」


トイレに行っていた翼が登校したばかりの咲夜に声をかけた。さーと思い出すだけで怖くなった咲夜は、翼の腕を掴んで、トイレの個室まで引っ張った。


「ちょ、待って。咲夜、私、そう言う趣味はないんだけど」


 ものすごい近い距離でトイレの中に2人で入った。小声で話し出す。


「私もそんな趣味無いよ! というか、聞いて欲しいんだけど!!」


「なに、どうしたの? なにをアウトプットしたいのさ?」


「いやいや、だからさ。私、昨日、追いかけられたの」


「え、好きだからでしょ? ラブラブじゃん。良いなぁ」


「ち、違うよ。静かに声も掛からなかったの。靴のカツカツって音が怖くて!

 最初誰か分からなくて、電話で聞いたら悠だったの。すごいびっくりしてさ。琉偉に助けてもらったんだ。……私,どうしたらいいんだろ」


 翼はしばし沈黙する。


「むしろ、この状態もやばいけどね。トイレの個室に2人って……」


「あ、ごめん。んじゃ、出ようか」


 咲夜が個室のドアを開けようとすると、目の前には、無表情の悠が立っていた。


「きゃーーーーー」


 あまりにもびっくりして、ぺたんと腰が抜けて、立てなくなった。


「え……え……ちょっと待って。私って何? お化けか何か?」


昨夜の態度にかなりショックを受けたようで悠は目を丸くして驚いていた。

悲鳴が幽霊でも出たかのようだった。


「あれまあ、悠、来てたのね。久しぶり」


「翼、元気にしてた? トイレの個室に2人で仲良いね。もうすぐ授業始まるよ。行かなくていいの?」


「だよね。せっかく早く来たのに遅れちゃうわ。んじゃ、また昼休みに話そう、咲夜」


「う、うん」


 咲夜と翼は、早々にトイレを後にした。悠は手を洗ってから、2人がいなくなったのを確かめてから左耳につけておいた小さなワイヤレスイヤホンを取った。

 咲夜のスマホにはGPSアプリついてることと、制服ブラザーの首後ろには小さな盗聴器をつけていた。翼と話していた言葉も全て聞いていたのだ。


 悠は、自分のことを話そうとしてるんだなと予測する。


 ため息をついて、鏡を見つめ、髪をかき上げた。何をどうこう言われても、

 全然気にしていない。それよりも琉偉のことをどう思ってるかのことが気になって仕方なかった。

 咲夜は翼は何でも無い他愛もない話で盛り上がっていた。

 悠は鏡を見ながら、小指の爪を噛んでいた。

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