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第33話

「ちょっとちょっとぉー、どういうこと?」


 咲夜と悠が、仲良く並んで登校してる姿を翼は昇降口で見かけて、迫っていく。ずんずん近づいて、咲夜の肩に触れた。


「えっとまあ、仲直りしたってことかな」


「えー? 悠、咲夜に謝ったってこと? 許してくれたのストーカー事件」


 少し大きな声で話す翼を咲夜は慌てて、口をふさぐ。周りには先輩や同級生などたくさんの生徒たちがいた。もごもごと言う翼をラウンジのところまで連れて行った。


「ぷはぁ! もう、ふさぐこと無いでしょう!」


「さっきの発言はちょっとやばいな」


 悠はドキドキして言う。咲夜も同じ気持ちになった。


「ごめんごめん。元通りに戻ったってことなのね。それなら安心だよ。まったくもう、悠は本当に咲夜のことが好きなんだから。あ、間違った あ・い・し・て・る? だったね」


 ニヤニヤしながら翼は、悠の体に肘で打った。

 悠は、ニコニコして、嫌な顔一つしてない。


「そんな言わないでよ!!」


 咲夜は、恥ずかしくなって、翼の頬をバシッとたたいた。頭に疑問符を3つ浮かべた。


「え、ちょっと待って。確かに私が発言したけど、そう思ってるのは悠だから!! 叩く人間違ってる」


 咲夜は聞いてるのかわからないが、悠の顔をジロジロ見て、目がハートにして、横に立った。自然の流れで悠は咲夜の腰に手を触れた。


 はたから見たら、2人は美男美女カップルそのものだ。制服は男子と同じズボンであるし、髪型は今流行りの韓国アーティストのような雰囲気だ。

 終始ラブラブの姿を見て、翼は呆れ顔になる。


「はいはい、ごちそうさま。わたしも早く彼氏欲しいなぁ……」


 べったり離れない2人をよそに翼は教室に向かうため、階段をのぼろうと

 する。


 壁に寄り添って立っている琉偉がいた。全く話したことのない翼はドキドキしながら素通りする。


(琉偉先輩も、咲夜に振られるなんて同じかっこいいでも訳が違うんだろうな……)


 通り過ぎようとすると、後ろから声がした。


「ねぇ、あのさ、君って咲夜の同級生でしょう?」


「え、あ、まぁ、そうですけど」


「俺さ、今度ライブするんだけど、咲夜に渡してくれない? コレ、ライブチケット。2枚あるから、君もぜひ来てよ」


 琉偉は、翼にそっとライブチケットを渡した。


「あーそうなんですか。ライブ……。チケット代金は払わなくていいんですか?」


「あ、まぁ、おごりよ。友情の印ってことで。俺はどっちかっていうと彼女割引がよかったけどさ」


 少し泣きそうな様子で言う。翼は直接本人に渡せばいいのにと

 思いながら、チケットをバックにしまった。


「んじゃ、咲夜によろしく!!」


「あ、あの!」


「え?」


 階段をのぼろうとする琉偉はきょとんとした表情で振り向いた。

 2人の間には、生徒たちが行き交っている。


 いつの間にか、悠と咲夜は教室の方へ移動していて近くにはいなかった。

 翼は息をのみ、バックのとってを握りしめて、決心する。


 本鈴のチャイムが鳴り始めていた。




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