「ちょっとちょっとぉー、どういうこと?」
咲夜と悠が、仲良く並んで登校してる姿を翼は昇降口で見かけて、迫っていく。ずんずん近づいて、咲夜の肩に触れた。
「えっとまあ、仲直りしたってことかな」
「えー? 悠、咲夜に謝ったってこと? 許してくれたのストーカー事件」
少し大きな声で話す翼を咲夜は慌てて、口をふさぐ。周りには先輩や同級生などたくさんの生徒たちがいた。もごもごと言う翼をラウンジのところまで連れて行った。
「ぷはぁ! もう、ふさぐこと無いでしょう!」
「さっきの発言はちょっとやばいな」
悠はドキドキして言う。咲夜も同じ気持ちになった。
「ごめんごめん。元通りに戻ったってことなのね。それなら安心だよ。まったくもう、悠は本当に咲夜のことが好きなんだから。あ、間違った あ・い・し・て・る? だったね」
ニヤニヤしながら翼は、悠の体に肘で打った。
悠は、ニコニコして、嫌な顔一つしてない。
「そんな言わないでよ!!」
咲夜は、恥ずかしくなって、翼の頬をバシッとたたいた。頭に疑問符を3つ浮かべた。
「え、ちょっと待って。確かに私が発言したけど、そう思ってるのは悠だから!! 叩く人間違ってる」
咲夜は聞いてるのかわからないが、悠の顔をジロジロ見て、目がハートにして、横に立った。自然の流れで悠は咲夜の腰に手を触れた。
はたから見たら、2人は美男美女カップルそのものだ。制服は男子と同じズボンであるし、髪型は今流行りの韓国アーティストのような雰囲気だ。
終始ラブラブの姿を見て、翼は呆れ顔になる。
「はいはい、ごちそうさま。わたしも早く彼氏欲しいなぁ……」
べったり離れない2人をよそに翼は教室に向かうため、階段をのぼろうと
する。
壁に寄り添って立っている琉偉がいた。全く話したことのない翼はドキドキしながら素通りする。
(琉偉先輩も、咲夜に振られるなんて同じかっこいいでも訳が違うんだろうな……)
通り過ぎようとすると、後ろから声がした。
「ねぇ、あのさ、君って咲夜の同級生でしょう?」
「え、あ、まぁ、そうですけど」
「俺さ、今度ライブするんだけど、咲夜に渡してくれない? コレ、ライブチケット。2枚あるから、君もぜひ来てよ」
琉偉は、翼にそっとライブチケットを渡した。
「あーそうなんですか。ライブ……。チケット代金は払わなくていいんですか?」
「あ、まぁ、おごりよ。友情の印ってことで。俺はどっちかっていうと彼女割引がよかったけどさ」
少し泣きそうな様子で言う。翼は直接本人に渡せばいいのにと
思いながら、チケットをバックにしまった。
「んじゃ、咲夜によろしく!!」
「あ、あの!」
「え?」
階段をのぼろうとする琉偉はきょとんとした表情で振り向いた。
2人の間には、生徒たちが行き交っている。
いつの間にか、悠と咲夜は教室の方へ移動していて近くにはいなかった。
翼は息をのみ、バックのとってを握りしめて、決心する。
本鈴のチャイムが鳴り始めていた。