目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第40話 翼の胸中

生徒たちが行きかう階段の踊り場で会ったのは、3階からおりてくる琉偉だった。


「あれ、翼ちゃんじゃん。あ、そういやさ、次のライブ、決まったから、あとでチケット渡すね」


 翼は琉偉の言葉に氷のように体が固まった。ライブのことは咲夜に言ってない。今ここで知られてしまう。


「ん? どした?」


 琉偉は翼だけのことを見ていて、咲夜のことは眼中になかった。もう吹っ切れているようだった。


「ねぇ、琉偉、いつの間に翼を口説いてるの?」


「え、あ、ん? べ、別に口説いてねぇし。ライブ誘っただけだよ。あれ、咲夜にもライブチケット来なかった?」


 その言葉を聞いて翼は心中穏やかではなかった。その場にいられなくなって、黙って逃げ出した。


「え、私、その話、聞いてない。あれ、翼、どこ行くの?」


「嘘、マジで? おかしいなぁ、ライブチケット渡してって翼ちゃんに頼んでたんだけども」


 後頭部をぼりぼりとかいて、困った顔をする。咲夜は、翼はこのことを黙っていて逃げたんだと察した。


「琉偉、翼を泣かしたらただじゃおかないからね!」


 そう言い捨てて、咲夜は、翼を追いかけた。今は、琉偉のことより翼の胸中の方が大事だなと思った。前までは翼と琉偉の関係が気になっていたが、本気なのではないかと感づいた。


「え、俺?! 翼ちゃんを泣かす?どういうことよ」

 咲夜が立ち去ったあとに首をかしげる琉偉だった。



 廊下に駆け出した翼を追いかける。咲夜は翼のことが気になり、鼓動が早くなった。今は咲夜と話したくないのか。ずっと黙ったまま窓を見つめて佇んでいる。


「翼、私、別に怒ってないよ。ライブチケット渡されていたのあえて、私には渡さなかったんだよね。悠のことがあったから」

「……」


 下唇を噛んで咲夜の顔を見た。咲夜は翼がこちらに振り向いて安心した。


「咲夜に私言わなきゃいけないことあるんだ」


「え、何?」


 開いていた窓から風から吹きすさぶ。咲夜のセミロングの髪がなびいて上にかきあげた。


「私、琉偉先輩が好きになったかもしれないんだ」


少し想像をしていたが、本当にそうだったのかと素っとん狂な声で話し出す。


「ふえ? ん? へーあぁー、うん。そうだと思っていたよ。翼が1人でライブ行ったってことだもんね。うん、そうそうそう」


窓に両腕をつけて中庭を眺めて明後日の方向を見る。本質を見抜かれたくなかった。思いっきり挙動不審だ。自分にはしっかりと悠という存在がいるのになぜか幼馴染だというポジションでなんでも知ってるんだぞとどこかマウントを取りたいのか。なんだか複雑な気持ちになっている。


そんな様子を見て、翼もどう対応したらよいか迷っている。


そこへ、2人の間にだれかが横切った。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      


 少し想像をしていたが、本当にそうだったのかと

 素っとん狂な声で話し出す。


「ふえ?ん?へーあぁー、うん。

 そうだと思っていたよ。翼が1人でライブ行ったってことだもんね。

 うん、そうそうそう」


窓に両腕をつけて中庭を眺めて明後日の方向を見る。

本質を見抜かれたくなかった。思いっきり挙動不審だ。

自分にはしっかりと悠という存在がいるのに

なぜか幼馴染だというポジションで

なんでも知ってるんだぞとどこかマウントを取りたいのか。

なんだか複雑な気持ちになっている。


そんな様子を見て、

翼もどう対応したらよいか迷っている。


そこへ、2人の間にだれかが横切った。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?