悠が目を覚ました頃には真っ白い天井が見えていた。
いつも通う心療内科のかかりつけクリニック。
こんな身なりとしていることもあり、心と体のバランスがとれないことがしばしばある。
ベッドの横には点滴がイルリガードル台につるされていた。ゆっくりと落ちている
のがわかる。今日もここでお世話になっているのかとため息をついた。
「落ち着きましたか?」
担当看護師が声をかけてきた。名前は佐々
「はい。大丈夫です」
「さっきね、お母さんが病院に到着したみたいだから、こっちに呼んでもいい?」
「母が問題なければ、構いません」
「うん。大丈夫。それじゃぁ、呼んでくるわね。点滴はあと1時間はかかるから。寝てても大丈夫よ」
「はい、ありがとうございます」
悠はわりと冷静になって対応できていた。看護師の佐々木は、待合室に待っていた母をベットの横に呼んだ。
「悠、調子どう?」
「う、うん。大丈夫。今は落ち着いてるよ」
「学校の先生から連絡あったからびっくりしたわ。救急車で運ばれたっていうから、何事かと思ったわよ。大事に至らなくてよかったわね」
「うん、そうだね……仕事抜け出して大丈夫だったの?」
「何をそんな心配してるの。パートなんだから今更戻ったって仕事無いわよ」
笑いながら母はかわす。そんな母がありがたかった。幼少期から悠に寂しい思いさせたくないからとフルタイムの仕事は絶対したくないと断言していた。今、ここでパートで良かったわと安心する母だった。悠は母が近くいて、心から安心して眠りについた。悠は、精神的ダメージに過敏に反応する。特に性同一性障害についての周りの理解はまだ乏しい。精神安定剤を時々飲んでは心落ち着かせていた。
そんな悠のもとにたくさんの心配するメッセージがスマホアプリにたまっていた。目を覚ました時にそれを見たときは、心から浄化したように大量の涙を流した。
自分は一人じゃない。
誰にどう言われようとも助けてくれる咲夜や翼、まだ関係性はわからないが、琉偉もいる。
何よりも友人たちの言葉が精神安定剤の薬よりもパワーがあった。
男の姿になったといったとしても心は人間であり、弱い部分も持っている。
その弱さで人にやさしくできるんだなと感じた。