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追放された聖女の前世は浪速のおばちゃんだった
追放された聖女の前世は浪速のおばちゃんだった
ゆる
異世界恋愛ロマファン
2025年05月16日
公開日
5.1万字
完結済
【偽聖女として追放された令嬢が、浪速魂で王国に旋風を巻き起こす!】 清らかなはずの聖女として追放された公爵令嬢ステラ。しかし、ある出来事をきっかけに彼女の中に眠る“浪速のおばちゃん”の魂が目を覚ます──!? 優雅な令嬢の外見に、中身はパワフルで飴ちゃん常備の関西系おかん!? 理不尽な陰謀に飴と知恵で立ち向かい、陰で操る者たちを一人また一人と逆転ざまぁ! 笑いあり、涙あり、そしてちょっぴり胸キュンも。 元・聖女(中身おばちゃん)、王国再起の逆転劇がいま始まる!

第1話 婚約破棄の宣告

王宮の大広間は煌びやかな装飾で彩られ、多くの貴族たちが華やかな衣装に身を包み集まっていた。しかし、そこに漂う空気は冷たく重い緊張感に包まれている。


王太子カルヴィンは、その場の中央に立ち、凛々しい姿で全てを見渡していた。その隣には、純白のドレスを身にまとった新聖女候補のカトリーナが、柔らかな笑みを浮かべて立っている。そして、彼らの正面には、公爵令嬢であるステラが毅然とした表情で立っていた。


「本日、この場をもって、私は公爵令嬢ステラ=ルミエールとの婚約を破棄する。」


カルヴィンの冷たい声が広間に響き渡る。その瞬間、貴族たちの間にざわめきが広がった。


「婚約破棄…?」

「いきなりそんなことを…!」


ざわつく声を背に、ステラはカルヴィンを真っ直ぐに見据えた。その瞳にはわずかな驚きとともに、冷静さが宿っていた。


「婚約破棄、ですか?」


彼女の声は静かで穏やかだったが、その裏に秘められた怒りと疑念を、カルヴィンは感じ取ったのか、わずかに表情を曇らせた。


「そうだ。」


カルヴィンは冷たい口調のまま続けた。


「君には聖女としての資格がない。それが理由だ。」


その言葉に、ステラの眉が僅かに動く。


「聖女の資格…それが婚約破棄の理由と?」


彼女が尋ねると、隣に立つカトリーナが柔らかな声で口を挟んだ。


「ステラ様。聖女とは神聖な力を授かった存在。ですが、あなたにはその力がありません。」


カトリーナの声は優雅で穏やかだったが、その言葉には明らかに優越感が込められていた。


「聖女の力がない…。それを証明する方法がありますの?」


ステラは冷ややかな笑みを浮かべ、カトリーナを見つめた。その言葉にカトリーナの笑みがわずかに揺らぐ。


「証明…ですか?」


「ええ。あなたがそう断定する根拠を聞かせていただけますか?まさか、ただの噂話や憶測で、私を偽聖女と呼ぶわけではありませんよね?」


その一言に、カトリーナの顔が引きつる。しかし、カルヴィンが彼女を庇うように前に出た。


「ステラ、もういい。」


彼の冷たい声がステラの反論を遮る。


「君は王太子妃となる資格を失った。それだけのことだ。」



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広間に広がる冷たい視線


その言葉が放たれた瞬間、広間全体がさらにざわめきを増した。


「王太子妃となる資格を失った…?何ということだ。」

「しかし、あのカトリーナが選ばれるのか?」


貴族たちの声が飛び交う中、ステラはまっすぐにカルヴィンを見つめ続けた。


「分かりました。」


静かに頷いたその言葉に、周囲が一瞬静まり返る。


「ですが、覚えておいてください。この決定が正しいものであると証明できない限り、私はあなたを許すことはありません。」


彼女の毅然とした言葉に、カルヴィンは一瞬だけ表情を曇らせた。しかし、すぐに冷たい視線を取り戻し、背を向けた。



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追放の宣告


カトリーナが満足そうに微笑む中、カルヴィンは再び口を開いた。


「そしてもう一つ。公爵令嬢ステラ=ルミエールには王宮からの追放を命じる。」


「追放…ですって?」


ステラは冷静を保ちながらも、思わずその言葉を反芻した。追放。それは、ただの婚約破棄以上に彼女の名誉を傷つけるものであった。


「偽聖女と呼ばれた者が王宮に留まることは許されない。それが王家の判断だ。」


カルヴィンの冷たい宣告に、広間の空気がさらに冷たくなった。


ステラは拳を強く握りしめながら、毅然とした態度を崩さなかった。


「分かりました。では、私はこの場を去ります。」


その言葉に、周囲の貴族たちが驚きの声を漏らした。


「だが、覚えておいてください。」


ステラは広間全体に聞こえるよう、はっきりと言い放った。


「あなた方が下したこの決定が間違いだったと分かる日が来た時――その時は後悔なさらぬように。」



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ステラの退場


ステラが広間を後にしようとすると、カトリーナがわざとらしい声で言った。


「お気をつけて、ステラ様。これからの道は険しいでしょうけれど、神の祝福をお祈りしております。」


その言葉に、ステラは振り返らず、軽く笑みを浮かべたまま広間を去った。


「神の祝福?そんなもん、いらんわ。」


その小さな呟きは誰にも聞こえなかったが、彼女の胸の奥には燃え盛る炎が宿っていた。



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