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第15話 新しい道への決断

 アルフレッドの裏切りと愛人の存在を知り、さらに自分が政治の駒として利用されていた事実に気づいたジュリアは、これ以上耐えることに意味がないと悟った。絶望の中で見えたレオナルドの温かい言葉と真心は、ジュリアの心に新たな希望の火を灯していた。彼女はこれまで抑え込んでいた感情と向き合い、そして自らの人生を取り戻すために行動を起こす決意を固めつつあった。



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最後の夜


その晩、ジュリアは自室の窓辺に立ち、夜空に輝く星を眺めていた。冷たい夜風が彼女の頬を撫で、彼女の心を落ち着かせてくれるようだった。


「私はこれからどうすればいいの……?」

ジュリアは自問した。アルフレッドとの関係を続けることは、自分を完全に否定し、彼の都合のいい人生を支えるだけの存在でいることを意味していた。一方で、この結婚を終わらせることは、家族や社交界の立場を危うくする可能性がある。


しかし、彼女はもう一人ではなかった。レオナルドの言葉と支えが、彼女の背中を押してくれていた。


「君には、自分の幸せを選ぶ権利がある。」


その言葉が頭の中で何度も繰り返され、彼女の胸に強い決意を芽生えさせた。



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アルフレッドとの対峙


翌日、ジュリアはアルフレッドに話をするため、書斎を訪れた。彼に自分の決意を伝える最後の場となるはずだった。


「何の用だ?」

アルフレッドは机に向かったまま、ジュリアの姿を見ようともせずに言った。その冷たい態度が、彼女の決意をさらに固めた。


「お話があります。」

ジュリアは静かに、しかし力強く言葉を発した。「これ以上、私たちの関係を続けることはできません。」


その言葉に、アルフレッドはようやく顔を上げた。眉をひそめ、面倒そうな表情を浮かべていた。


「何を言っているんだ?」

彼の声には怒りというよりも、驚きと苛立ちが混ざっていた。


「私は、あなたが愛人を囲っていることも、私を利用して政治的利益を得ていることも知っています。」

ジュリアの声は震えていなかった。その静かな言葉が、彼にとって想定外だったのか、アルフレッドは言葉を失ったようだった。


「これ以上、私はあなたの都合のいい人生を支える道具にはなりません。」

ジュリアは続けた。「この結婚を終わらせたいと思っています。」


アルフレッドはしばらく黙り込んでいたが、やがて冷たい笑みを浮かべた。

「君が何を言おうと、私の計画に影響はない。だが、もし君がその道を選ぶというのなら、覚悟はしておけ。」


その言葉は脅しにも聞こえたが、ジュリアの決意を揺るがすものではなかった。彼の態度が変わらないことを確認したことで、むしろ彼女の中の意志はさらに強くなった。



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レオナルドとの約束


書斎を出たジュリアは、その足でレオナルドの家を訪ねた。彼に自分の決意を伝え、支えてほしいと頼むためだった。


「ジュリア、どうだった?」

レオナルドは心配そうに彼女を迎え入れた。


「私は、アルフレッドとの結婚を終わらせることを決めました。」

ジュリアの声は揺るぎないものだった。「彼の裏切りを許すことはできないし、私はもう彼に利用されるだけの存在ではいられません。」


レオナルドは深く頷き、彼女の手を優しく取った。「君がその決断をしてくれたことが、本当に嬉しいよ。君の幸せのために僕にできることがあれば、なんでもする。」


その言葉に、ジュリアの目から自然と涙がこぼれた。彼の真摯な姿勢が、彼女の心をさらに支え、これからの道に勇気を与えてくれた。



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新しい未来への準備


その夜、ジュリアは自室で手紙をしたためた。それはアルフレッドに宛てたもので、これまでの結婚生活に対する自分の感情と、これからの人生をどう生きていくかを伝える内容だった。


「私はこれ以上、あなたの道具として生きるつもりはありません。自分の人生を取り戻し、幸せを追求することを選びます。」


手紙を書き終えた後、ジュリアは深い息をついた。そしてそれを机の上に置き、自分の決断を形にしたことで、胸の中に少しの安堵が広がった。



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新たな一歩


翌朝、ジュリアは荷物をまとめ、屋敷を出る準備を整えた。アルフレッドからの冷たい視線や侍女たちの憐れむような目にも動じることなく、彼女は自分の足で新しい未来への一歩を踏み出した。


レオナルドが待つ場所に向かいながら、ジュリアはこれまでの孤独と苦しみに感謝すら覚えていた。それがあったからこそ、自分の幸せを追求する強さを得られたのだと感じたのだ。


「これからは、自分のために生きるわ。」

その言葉を胸に、ジュリアは未来を見据えた。そして、初めて心からの笑顔を浮かべることができたのだった。


彼女の中で灯った希望の光は、もう消えることはなかった。



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