ジュリアはレオナルドと再び会うたびに、彼の存在が自分にとって大きな安心感をもたらしていることを実感していた。しかし、それと同時に自分の心が彼にどのように向き合うべきか迷い続けていた。愛を信じることができないのではなく、その信じ方を忘れてしまった――そんな感覚が彼女の中にあった。
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庭での語らい
ある日、ジュリアはレオナルドを庭に招き、一緒にお茶を楽しんでいた。バラの花々が風に揺れ、甘い香りが漂う中で、二人は穏やかな時間を過ごしていた。
「レオナルド、この庭に来てくれてありがとう。」
ジュリアはティーカップを手に微笑みながら言った。「あなたといると、心が落ち着くのを感じるわ。」
「僕も君と過ごす時間が本当に好きだよ。」
レオナルドは彼女の言葉を受けて、同じように微笑んだ。「君がこうして笑顔を見せてくれるだけで、僕はそれだけで十分だ。」
その言葉にジュリアの胸が少しだけ暖かくなった。彼の誠実さは、彼女がこれまで感じたことのない安心感を与えてくれていた。
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愛の形を考える
二人が静かにお茶を飲む中で、ジュリアはふと口を開いた。
「レオナルド、あなたにとって愛って何かしら?」
突然の問いに、彼は少し考え込んだ後、真剣な表情で答えた。
「僕にとって愛は、相手のすべてを受け入れることだと思う。過去も、今も、未来も。その人がどんな状態でも、そばにいたいと思う気持ちかな。」
「そばにいたい……。」
ジュリアはその言葉を繰り返しながら、小さく頷いた。「私はまだ、自分が誰かを受け入れる準備ができているのか分からないわ。でも、あなたの言葉を聞いていると、少しだけ希望が見える気がするの。」
「それで十分だよ、ジュリア。」
レオナルドは彼女の言葉に優しく頷いた。「僕は急いで答えを求めたりしない。ただ、君が安心して前を向けるようにそばにいたいだけなんだ。」
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思い出の場所へ
その日の午後、レオナルドはジュリアを散歩に誘った。彼女の屋敷の近くには、二人が幼い頃によく遊んだ小さな森が広がっていた。久しぶりに訪れるその場所には、懐かしさとともに、新しい感情が芽生える空気があった。
「ここは変わらないわね。」
ジュリアは木漏れ日が差し込む森を見上げながら言った。
「そうだね。ここで君と遊んだ記憶は、僕にとって特別なものなんだ。」
レオナルドは隣を歩きながら、静かに答えた。「君がアルフレッドと結婚した後も、ここに来るたびに君のことを思い出していたよ。」
「私のことを……?」
ジュリアは少し驚きながら彼を見上げた。その言葉には、彼の深い思いが込められているのを感じた。
「うん。君がどんな生活をしているのか、どれだけ幸せでいてくれるのか、そればかり考えていた。でも、今こうして君と一緒にいられることが、僕にとって本当に幸せなんだ。」
レオナルドは穏やかに言いながら、彼女を見つめた。
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心の中の揺れ
レオナルドの言葉に、ジュリアの心は大きく揺れた。彼の愛情がどれだけ純粋で深いものであるかを理解しながらも、それを完全に受け入れることへの不安が彼女を縛っていた。
「私は……あなたの気持ちを本当に受け止めることができるのかしら。」
彼女は小さな声で呟いた。
「大丈夫だよ、ジュリア。」
レオナルドはその言葉を聞き逃さず、優しい声で答えた。「君がどれだけ時間をかけても構わない。それでも、僕は君を待つよ。」
その言葉に、ジュリアの胸にかすかな安心感が広がった。彼の愛は、彼女がこれまで知っていたどんな愛とも違っていた。それは、彼女の心を無理に変えようとするものではなく、ただそばにいることで支えようとするものだった。
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新たな決意
その夜、ジュリアは自室に戻り、日記に今日の出来事を記した。レオナルドと過ごした時間の中で、自分の中に小さな変化が起きていることを感じていた。
「彼といると、過去の痛みが少しだけ和らぐのを感じる。それでも、私はまだ自分の心と完全に向き合えていない。でも、彼が待ってくれると言ってくれたことが、私にとってどれだけ大きな救いだったか……。」
ジュリアはペンを置き、静かに窓の外を見上げた。夜空には星が輝き、その光が彼女の心に希望をもたらしているように感じられた。
「私はきっと、もう一度愛を信じることができる。」
ジュリアはそう呟き、静かに目を閉じた。
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結び
レオナルドとの時間を通じて、ジュリアは少しずつ愛に向き合う勇気を取り戻しつつあった。彼の誠実さと優しさは、彼女に新たな希望と決意を与えていた。過去の傷は完全に癒えていないが、ジュリアは未来に向けて確かな一歩を踏み出し始めていたのだった。