結果付与はできなかった。
どうしても漆黒が琥珀を弾いてしまうからだ。
俺は一人クリスタルの間で悩んでいた。
突然クリスタルが揺らぎ始め、瞬いた。
「光喜さん、大丈夫?」
俺は飛び上がるほど驚いた。
ここは禁忌地なんて目じゃない。
俺以外は入れないはずだ。
「あ、茜?どうして……っ!?体は大丈夫か?!」
俺は慌てて茜を抱きしめて魔力で包み込んだ。
茜の存在が削られていた。
「あれ?……力が………あ……」
「くっ、転移!!!」
俺は茜が来たときに確かにクリスタルが揺らいだのを見たんだ……
※※※※※
「ん………あれ?……私………」
「茜っ!!??大丈夫か!!?」
わたしが目を覚ますと、光喜さんが苦しいくらいに抱きしめてくれた。
今まで何度も抱きしめられているはずなのに、なぜだか涙があふれてきた。
「グスッ…ごめ…んな……さい……」
「よかった……茜……良かった……」
光喜さん?泣いて………
「怖かった。お前が消えるんじゃないかって………こんなに怖かったのは初めてだ」
そして今度は優しく抱きしめられて、優しいキスをしてくれたんだ。
ずっと、ずっと…………
※※※※※
それから5日くらい、わたしは光喜さんに抱きしめ続けられた。
こんなこと言ったら怒られそうだけど………
嬉しかった。
※※※※※
茜がクリスタルルームで倒れて6日が経過した。
やっと存在が安定して、俺の魔力で守らなくても問題ない状態になった。
あの時、茜の存在自体が急激にクリスタルに吸収され始めたんだ。
存在が急激に消滅していた。
6日ぶりに俺は会議室へといった。
「すまないみんな。茜はもう大丈夫だ。消えることはない」
茜が倒れて存在が消耗したことは全員が共有していたので、取り敢えず落ち着いたことに、全員がほっとした。
その情報を共有したことで、皆が安堵の涙を流した。
アルテミリスが膝から崩れ落ちて、もう枯れるんじゃないかというくらいに流した涙を、さらに零し始めた。
他の皆も目が真っ赤だ。
「ノアーナ様、ノアーナ様もお休みください。真核がボロボロです」
モンスレアナが赤く泣きはらした瞳で、俺にやさしく告げた。
ネルがそっと俺の腕をとってくれる。
「ああ、そうさせてもらおう。アート、自分を責めないでくれ。これは俺のミスだ。茜に言うのを忘れていたのは俺の責任だ」
コアのあるクリスタルルームは基本俺しか入れない。
神々は弾かれてしまう。
しかし茜は………転生したときから俺と同じ色を持っていた。
つまり来れてしまったんだ。
憔悴しきってやつれてしまったアースノートに告げた。
「……ぐすっ………あーしが……コアのことを……茜に…ごめんなさい………」
俺はネルに付き添われてアースノートのもとへ行った。
アースノートを抱きしめてやる。
華奢な体が震えていた。
「アート、本当だ。お前に責任は一切ないんだ。少し休め」
「………ぐすっ……」
アースノートは自室へ飛んだ。
「アルテ、お前もだ……茜は俺の部屋で寝ている。見てからでもいいから休め」
「…はい………わかりました」
アルテミリスは転移していった。
「ダニー、エリス、お前たちもだ。休め」
泣きながら俯いている二人を優しく抱きしめてから転移させた。
「アグ、すまん。お前が頼りだ。皆を守ってくれ」
「わかったー。でもノアーナ様もちゃんと休んでよー」
「ああ、ありがとう。ネル、頼めるか?」
「……グスッ……はい……」
俺はネルに連れられて、グースワースへ飛んだ。
茜が回復し、ギルガンギルが通常に戻るまで1か月を必要とした。