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第160話 グースワース防衛戦

ノアーナとムク、ネルが出立してすぐ。


カンジーロウの戦闘部隊がグースワースの正門前に転移してきた。


グースワースの入り口以外は十重二十重の障壁に守られている。

なのでこの正面だけは自力で守る必要があるのだ。


カンジーロウも最近遂に転移魔法を習得していた。

一緒に転移してきたゴドロナ、アカツキ、ミーア・ルンドもすぐに臨戦態勢を整える。


正門の前ではレーランとロロン、コロンが普段は装着しない軽鎧を身に纏っていた。

レーランは自分の二倍はあるような長刀を、ロロンは大きなオリハルコン製のハンマー、コロンは杖先に大きな魔石を埋め込まれている杖を装備し、臨戦体勢だ。


「レーラン様、どんな感じですか?」


カンジーロウは自らの魔力を広げ、索敵をつづけながらも問いかけた。


「ご苦労様です、カンジーロウ。数体魔物が近づいていますね。まあ、まだ雑魚のようですけど」


「ダンジョンブレイクでしょうか」


カンジーロウはすらりと鞘に納められていた刀を抜いた。


「ノアーナ様はそうおっしゃっていたわ。そしてあの警戒。おそらくここにも来るのでしょうね」


「クルアアアアアア!!!」


突然4体のワイバーンが、話している二人に襲い掛かってきた。


カンジーロウは索敵していたため慌てずに1体のワイバーンめがけ剣を振りぬく。

レーランもおもむろに長刀を振る。


「グギャアアアアアアアーーーー!!!!」


一瞬で2体のワイバーンが切り裂かれ、地面にたたきつけられた。


「やっ!!」


ロロンが大きなハンマーを振り上げ、瞬間でワイバーンの頭上に出現する。

そして可愛らしい掛け声とともに、破壊の力が炸裂!


「えーい!!」


ドゴオオッ!!!!!


「グギャッ!!」


体がひしゃげ、地面に叩きつけられ沈黙するワイバーン。

そしてほぼ同時に小さいトカゲのようなピンク色の可愛い召喚獣が残った1体のワイバーンに10体ほど取り付いた。


「倒せ!ミニトカゲ軍団!!」


コロンの杖の魔石が怪しく光を放つ。


「っ!?…グギャ、グギャアアアアーーーーーーー」


ズドオオ!!

体中を喰いつかれおびただしい血を流しながら、ワイバーンはたまらず地上へ墜落、そこへアカツキの双剣とゴドロナの棒が叩きこまれる。


「グギャアアアアアアーーーーーー!!!」


そして4体のワイバーンは倒された。


「えっへん」


胸を張るロロン。

大きな胸がプルンと揺れる。


カンジーロウは顔を赤くし横を向く。


「コロンもよくできましたね。流石です」


ニコニコ顔のレーランがコロンの頭を撫でた。


「っ!?レーラン様、次が来ました」


カンジーロウが刀を構える。

ゴドロナ、アカツキが腰を落とし、ミーアは『戦いの高揚』バフ魔法を全員に付与する。


「いでよ!守りの軍団!!」


辺りを濃紺の魔力が覆う。

グースワースの石畳の途切れた土の部分から、数十体の鎧を纏うスケルトンソルジャーが這い出してきた。

さらにアースゴーレムも数体形成されていく。


「お待たせしました。加勢します!」


門からミュールスが、まるで戦乙女のような美しい装備を纏い大きな杖を掲げ飛び出してきた。


ミーア・ルンドが見蕩れてしまう。


「かっこいい♡」


思わず照れるミュールス。


「っ!?もう、そんなこと言ってる場合じゃ…来るよ!」


そしてスケルトン部隊とアースゴーレムに、ネオウルフとジャイアントリザードの群れが襲い掛かってきた。


突っ込んでいくゴドロナとアカツキ。

ミーアは土魔法で障壁を形成する


ガシャアアーーーーン!!

ドゴオオッ


「キャイン!!!」

「グガアアアアアーーーーー」


レーランがすっと目を細める。


「ふう、大物が来ましたわね。カンジーロウ、三つ首ですわ。しかもおまけ付き……わたしに任せてくださるかしら」


そして目を光らせる。


三つ首は存在値が1500程度だが、ここに来たのはどうも変異種らしい。

レーランの瞳の捉えたそれは4000を超えていた。

そして3000越えのデュラハンを二体引き連れていた。


「っ!?悔しいですが俺たちじゃどうしようもないようです。お任せいたします」


土の壁を乗り越えてくる魔物に刀を振るい倒しながらもカンジーロウはレーランへ告げた。


「ええ、ふふっ、久しぶりに本気が出せそう……真龍化!!」


顕現する青いオーラを纏う美しいホワイトドラゴンの王。

おもむろに三つ首とデュラハン二体を巻き込む極低温のブレスを浴びせる!!


「グギャアアアーーーー」

「「!!……」」


直撃を受けた3体の魔物は数十メートル押し戻された。


『ここは任せます。ロロン、コロン、踏ん張りなさい』


そして突撃。

激しい戦闘の幕が上がる!!


「俺たちはここの防衛だ!!気合い入れろ!!」


カンジーロウの檄が飛ぶ。


「「おう」」

「「「「はいっ!!」」」」


※※※※※


デュラハンは大きな斬馬刀をレーランにたたきつける。

三つ首ドラゴンの二つの口から灼熱と礫を含む風のブレスが同時に放たれた。


『くだらない攻撃ね』


斬馬刀を大きな手でいなし、ブレスは防御壁が無効化する。


『まずは一つ』


レーランの美しい長い尾が、1体のデュラハンを薙ぎ払う。

溜まらず大木を何本も巻き込みながら吹き飛ばされるデュラハン。


そしてそこに質量の乗ったレーランの腕が叩きつけられる!!


グワシャアア!!

原形を保てないそれは沈黙した。


『っ!?ちっ、多いですね』


のそりと立ち上がる三つ首ドラゴンの周りに、さらに数十体のジャイアントリザードが集まってくる。

もう一体のデュラハンがダメージを無視し大きな斬馬刀を振り上げ猛然と突っ込んできた。


『くっ、この!!』


ガキイイーーーンン


斬馬刀がレーランの美しい鱗に傷をつける。

相手はアンデッドだ。

痛みには怯まない。


レーランはいなしながらも竜言魔法を紡ぐ。


『悉く凍り付け!!獄魔氷結陣!!』


レーランを中心に極低温地獄が顕現!!すさまじい勢いで絶対零度の波動が牙をむく!!


凍り付くデュラハンとジャイアントリザードの群れ。

レジストした変異種の三つ首ドラゴン以外が沈黙した。


「グルアアアアアアーーーーー」


怒りの咆哮を上げる三つ首ドラゴン、そして再度突っ込んできた。


『下郎が!!身の程を知れ!』


レーランの瞳が冷たい光を放った。


※※※※※


グースワースはこの世界では魔境に位置づけられる場所に存在している。

そして創造したのはあの魔王、ノアーナだ。


対策はこれでもかとされていた。

うん。

過剰なほどに。


「カナリアお母さん。いえ、副指令!準備完了です」


極彩色の戦闘服に身を包んだエルマが、顔を赤らめカナリアに敬礼する。

残された皆がそれぞれ目に痛いような原色の、なぜか体のラインが強調された恥ずかしいコスチュームに身を包んでいた。


思わずため息を吐くカナリア。

そんなカナリアも赤い革製のジャケットに頭には意味もなくサングラス、黒い色っぽいタイトスカートを身に纏っている。

その隣には何故か某アニメの指令の様な格好のヒューネレイが、無表情で立ち尽くしていた。


「こういうのは形が重要だ!!おお、カナリア。よく似合うなあ」


そんなノアーナの言葉が脳裏に浮かんだ。


緊急時に着用が強制されている衣装だった。

しかもこれを着用しないとグースワースの防衛能力を使用できないとの縛り付き。


「まったく。あとでお説教ですね」


カナリアは思わず悪い顔を浮かべる。

皆の腰が引けたのは内緒だ。


「コホン。グースワースに非常事態を発令。各員臨戦態勢!!プランBへ移行!!」

「司令、よろしくて?」

「ああ」


これでヒューネレイの役目は終わりだ。

カナリアの顔が羞恥で赤く染まる。


「くっ、……世界を守るわよ!!愛の力で!!!」


この一連の流れがキーワードになっているのだ。

ノアーナの悪乗りに頭を抱えたいカナリアだった。


「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」


そして談話室の奥の、いつもは閉じられた秘密の扉が音を立て開かれる!!


そこには完全に時代を間違えられて設置された近代的な司令部と、モニター付きのコックピットが30か所ほど設置されていた。


「皆、配置につけ。そして……」


カナリアがサングラスをかけ頭にベレー帽な様なものをかぶる。


「くっ、恨みますよノアーナ様」


小声でつぶやくも、役目を果たすべく大きな声で号令を発する。


「殲滅開始!!各員ぶちまけなさい!!さあ、蹂躙の時間よ!!」


全ての計器に色がともり、機械音が鳴り響く。

そして各モニターに、映像が映し出され、トリガーが起き上がる。


「了解!!みんな!!愛の力で乗り切るわよ!!くうう」


顔を真っ赤に染めるエルマ。

なんだこのプレイ?!


そして始まる掃討という名の蹂躙劇。

グースワースの周りにはズタボロにされた魔物の残骸が築き上げられた。


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