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第193話 紋様のある連携する魔物

(新星歴4819年7月22日)


ノッド大陸では最近おかしな魔物がアグアニードの眷属により発見されていた。

一番警戒している漆黒や悪意ではないが、何故か嫌な予感をアグアニードは抱えていた。

魔物なのに、やけに連携してくる。

そして体の一部に紋様のようなモノ刻まれていた。


※※※※※


「大将、コイツら弱っちくてつまらねえな!」


眷属第1席のイアードが重そうなでかい戦斧をまるで小枝かの様に軽く振り回し、目の前のジャイアントアントの変異種らしきものの群れを薙ぎ払う。


「ギイイイイイイーーーーー!!!」


体液をまき散らしながら、暴風みたいに暴れるイアードによってみるみる数を減らしていく魔物の群れ。

フォローに入っている第6席のアガンドと第9席のモナザークも襲い来る牙や鋭い爪をうまくいなしながら、その数を減らしていった。


「おらおらおらおらあーーー、骨のあるやつはいねえのかよ!」

「ギイイイイイイイイーーーー!!!」


荒ぶるイアードの咆哮と暴力が、残り数体になった魔物に襲い掛かっていた。


「終わりだな」

「ああ」


アガンドとモナザークが言い合い帰還してくる。

その様子を眺めていたアグアニード。


突然、危機感知が反応する。


「!?イアードっ!!避けろ!!!」

「っ!?」


イアードを中心に、空間がゆがむ!!


カッ!!!!!!

そして閃光と超高温の地獄が暴威を振るう!

ジャイアントアントの死骸を巻き込み破壊の嵐がイアードを包み込んだ。


「うがああああああああーーーーー!!!」

「くそっ!」


アグアニードが全身に魔力をたぎらせた。

直後、爆心地でイアードを抱き、魔力を迸らせていた。


「アグアニード様!!!」

「イアード!!」


続けて二人も飛び込んでいく。


オオオオオオオーーーーンンン


大気が悲鳴を上げながら、終息していく破壊と超高温の連鎖。

妬け焦げる匂いと濛々と巻き上げられた土ぼこりがゆっくりと鎮静化していく。

パラパラと石や木片が地面に落ちてくる音が立て続けに響き渡る。


「イアード、おい、起きろ!!くそっ、モナザーク、回復だ!!急げ!!」


その中央で全身ズタズタになったアグアニードが、四肢を欠損したイアードを抱え立ち尽くしていた。

そして続けざまにバカみたいにでかい魔力の礫が、四方八方から襲い掛かってきた。


「くっ、フレイムバースト!!!!」


アグアニード渾身の、自分を中心に放射線状に放たれた魔法が礫の勢いをそぐ。

その隙をアガンドが見逃さなかった。

いち早く駆け付け術式を展開する!!


「土封結界構築!!」

「っ!?ナイスだ、転移!!!」


魔力の残滓を残して消えた4人。

どうにか危機を脱することに成功したのだった。


その様子をおびただしい数のオークメイジと怪しい杖を携えた黒ローブの男が森の中から感情のない目で見つめていた。

そしてしばらくすると、その姿はまるで何もなかったかのように消え失せた。


※※※※※


「オーバーヒール!!」


鮮烈な緑色の魔力に包まれ、時を戻すかのように復元していくイアード。

数秒後には欠損は回復し、安らかな呼吸が戻ってきた。


「もう大丈夫だとは思うけど……しばらく様子を見た方が良いと思う」


珍しくリナーリアが謙虚に物を言う。

それほど酷い怪我だった。


ここはグースワースの保健室。

運び込まれたイアードと、連れてきたアグアニード、眷族のモナザークとアガンドが心配しながらも、それぞれ治療を受けていた。


すでにリナーリアの治療の能力は、ギルガンギルの塔の能力を超えている。

そして一方では能力を伸ばしたサラナが、比較的軽いけがの治療を担当していた。


「はい、大丈夫ですよ」


回復したモナザークにニッコリ笑顔を向ける。

もちろん営業スマイルだ。


「ありがとう。美しいお嬢さん」


モナザークはサラナの手を取り、色気を瞳に乗せささやくように声をかけた。

サラナはちょっとアレだが、ものすごく可愛い。

彼は一目見てかなり気に入ってしまっていた。


「いえ、ふふっ、お上手ですね」


にっこり笑い、手をすっとかわして、そそくさとアガンドへと向かう。

モナザークは思わずため息をついた。


「あれ?……俺、それなりなのにな……そっけなさすぎなんだが?」


モナザークはかなりのプレイボーイだ。

女性の扱いには慣れている。

かなりのショックを受けていた。


その様子に気が付いたアグアニードはジト目だ。


「お前―、ノアーナ様の彼女に声かけるとかー。死にたいのー?」

「えっ?」

「あー、なんかーここにいる可愛い子は、ほとんどノアーナ様の彼女だよー」


空間が軋み凄まじい魔力があふれ出す。

ノアーナがアグアニードの魔力を感知し様子を見に転移して来た。


「アグ、大丈夫か?真核のダメージが濃いな。どれほどの敵か…」

「眷属の方が軽い、か。流石だなアグ。お前の判断は的確だ」


ノアーナは眷族の状況を確認し、挙動不審なモナザークに視線を投げる。


「ふむ。お前も優秀だな。ん?どうした、ずいぶん焦っているようだが」

「あーこいつ、そこの女の子にちょっかい掛けたんだよねー」

「ああ、そうか。まあな、サラナは可愛いからな。だがすまないな。サラナもリナーリアも俺の大事な女だ。譲るわけにはいかない」

「は、はい。すみません」

「謝る必要はないぞ?もし彼女たちがお前を選ぶなら俺は止めない。だが俺から譲ることはないがな。本気なら頑張ればいい」

「……ははっ、さすがですねノアーナ様。俺、もっと真剣に接することにします」

「???そうか?良く判らないがお前の好きにするといい。アグを助けてやってくれ」

「はっ」


ふむ、良い覚悟だ。

アグアニードの眷属は強者が多い。


「それよりアグ。打ち合わせが必要なようだが」

「うん、実はねー……ノアーナ様、二人で話したいな」

「分かった。執務室へ行こう」


「リナーリア、サラナ、皆を頼む。俺はアグと少し打ち合わせをする」

「「はい。行ってらっしゃい」」


可愛い二人の姿に癒され、俺たちは執務室へと転移した。


※※※※※


「最近変な魔物がいるんだ。紋様が刻まれている。見たことがない紋様だよー」


アグアニードがイメージを俺に飛ばしてくれた。


「ふむ。古代魔神語に近いが……分からないな。アートに解析するよう頼んでくれ」

「うん、わかったー」

「それでどうしたんだ?ずいぶん苦戦した様じゃないか」

「眷属がねー殺されかけたんだよねー。あと、あいつら連携するんだよー」


俺はかなり驚いた。

同じ魔物はコミュニティがあるが、普通は連携しないものだ。


「同種の奴らではないのか?」

「ありんこが魔法使わないでしょー」

「……神話級位だな。ジャイアントアントが使う事例はないはずだ」

「極大魔法だった」

「っ!?……あれは特化クラスしか使わないはずだが……確認したのか?」

「遠くに気配はあったよー。大量のオークメイジと、怪しい奴が一人」


大人数でレギオンクラスの極大魔法を紡ぐことはできる。

ただオークメイジ程度の知能ではあり得ないことだ。


「漆黒か?それとも悪意か?」


アグアニードは悔しそうに首をふる。


「それだけは自信を持って言える。絶対に違う」

「おそらく裏に奴がいるのだろうな」


こくりとアグアニードは頷いた。

俺は椅子の背もたれに体を預け、天井を見上げる。


「アグ」

「ん、なーに」

「次は俺も行く」

「……わかったー……ごめんなさいノアーナ様」


俺はアグアニードに近づいて、強く抱きしめる。

そして力強い口調で声をかけた。


「謝ることなんて何一つないだろ。俺はお前がどれだけ努力しているか知っているつもりだ。……頼りない魔王ですまないな」


そして背中を叩く。


「次は捕えるぞ。そして奴らの思い通りにはならないと証明しようじゃないか」

「っ!?…うん」


「これは俺とお前ら神々の案件だ。星を守るぞ」

「わかったよー、おいらも頑張るよ」


アグアニードが力強く笑った。

コイツに涙は似合わない。

俺は心が温かくなるのを感じていた。


※※※※※


眷属の治療が終わりイアードも目を覚ましたのでアグアニードたちはグースワースを去っていった。


俺は執務室にネルを呼ぶ。

打ち合わせを行うために。


「ネル、どうもきな臭い案件がこの星で起こり始めている」


ネルは心配そうに俺を見つめる。


「魔王と神々の案件だ。俺はしばらくグースワースを離れるつもりだ」

「っ!?わ、わたくしも…」

「ネルにはここを守ってほしい」


「……力が足りませんか?」

「ならば命に代えてでも、あなた様を守りたいのです」


決意を込めた目で俺を見つめる。

ネルはあれからも努力を続け、今では存在値を2600以上まで伸ばしていた。


「なあネル。覚えているかい?……君と出会えてもうすぐ3年になるんだ」

「はい、あの日の事は忘れません」


俺は改めてネルを見つめる。

ああ、本当に、なんて奇麗で可愛いんだろう。


「俺は18股の最低なクズ野郎だ」

「……」

「だけど俺が帰る場所はネルなんだよ」

「……はい」

「守ってほしいんだ。俺とネルで始まったグースワースを」


ネルの美しい翡翠のような瞳から一筋涙が零れ落ちた。


「ずるいです。……そんなこと言われたら……酷い人です」


俺はわざと何でもないような顔をし、ネルの頭に手を乗せた。


「ネル、信じて?それが俺の力になるよ。ネルを愛する最強の魔王だぞ?すぐに帰ってくる。だから俺の世界で一番かわいいネルの顔をよく見せてほしい」


ネルの顔が上気し、涙が止まっていく。

そして少し拗ねたような顔をし、そして…最高に輝く可愛い顔で笑ってくれた。


「はい。私の愛する魔王様を信じます。だから…絶対に無事で帰ってきてください」

「ああ、お前が信じてくれるなら俺は無敵だよ」


俺はネルを抱きしめ、可愛い唇にやさしくキスを落とした。


「帰ってきたらお前を寝かせないからな。覚悟しておいてくれ」


そしていやらしくネルの可愛いところを触る。


「ん♡…もう。……行ってらっしゃいませ」

「ああ、いってきます」


俺はギルガンギルの塔へ転移していった。

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