休み明けの翌日、私達2人は登校して直ぐ様に女子野球部への入部申請書類を提出しに職員室へと向かった。
綾瀬「はぁ?女子野球部を設立したいだと!?」
クラス担任である綾瀬は、複雑そうな表情をしながら部活設立の書類を眼に通す。
涼子「はい!私と梓を含めてまだ2人ですが。」
すると、綾瀬は腕を組み、何故か悩んでいた。
梓「おい、先公、どうしたんだよ?」
涼子「綾瀬先生、何か問題でも?」
綾瀬「女子野球部か…私が知る限り、学校側も野球部自体に興味がないんだよなぁ…新設するにも予算とかそういうのも問題だし。昨年は実績不足で卓球部とカバディ部が廃部になったばかりだし……。と言うか、実を言うとお前達2人以外にも、女子野球部を設立しようとしてる生徒が2人居てな。」
私と梓は、自分達以外にも女子野球部を設立してる女子生徒達の存在に驚きを隠さずにいた。
涼子「私達以外にも女子野球部を設立しようとする誰かが?その生徒達は今何処に居るのですか!?」
綾瀬「ああ、今、その生徒達は体育倉庫付近でキャッチボールの練習をしているはずだが…。興味有るなら、ちょっと見に行ってみるか?」
涼子「ええ、お願いします。」
梓「にしても、ウチ以外に女子野球部を設立しようとしてるのは、一体どんな奴等何だ?」
涼子「さぁな、取り敢えず直で会う他ないだろう。」
そうして綾瀬の案内を受けながら体育倉庫へ向かう涼子と梓。到着してみると、確かに2人の女子生徒たちが運動着姿でキャッチボールをしていた。キャッチボールしてたのは長い赤髪をした白ギャルと桃髪ツインテールの地雷系ギャルの2人組だった。
すると、赤髪のギャルが私達に気づいて話しかけてきた。
赤髪ギャル「あん?アンタ等誰?此処に何の用なん?」
桃髪ツインテ「まぁ…こんな連中見たことないけど…ねぇねぇ、あんた等もしかして、この辺の地元民?」
涼子「私は1年の小野寺涼子、で、此方は同じクラスメイトの村上梓。お前等と同じく女子野球部を設立しようとしてる者だが、そう言うお前等は?」
赤髪ギャル「ちょっ、小野寺涼子って、もしかしてだけど、昨年のUー18女子野球日本代表に選出したって言う『マグレの代表選手』!?」
桃髪ツインテ「マジ!?てか、村上梓って…金属バットで不良共を半殺しにしたって言う『血染めの鬼姫』!?」
梓「何だよ?私のこと知ってんのか?」
桃髪ツインテ「知るも何も有名だよ、どっかの不良グループを相手に金属バットを血染めにする程の暴力沙汰を起こして野球辞めたってさ。」
梓「それがどうした!!」
涼子「梓はな、好きで暴力沙汰を起こした訳じゃないんだ。何も知らないで梓を責めるんじゃねえぞ!!」
2人のギャルは謝罪する。
赤髪ギャル「そっか、ごめん、何も知らずに、ああ、私は1年の
桃髪ツインテ「アタシは同じく1年の
涼子「品川花蓮と池袋桃華?何処かで…。」
綾瀬「確か、出身中学は昨年の県予選ベスト4だった『北大路中』だったな。」
思い出した!
『北大路中』の鉄壁二遊間と呼ばれた名コンビ。確かその2人の名前も確か、そんな名前だと昔、スポーツ雑誌のインタビュー記事で読んだ事が有るぞ。
涼子「そう言えば、昨年の北大路中には鉄壁の二遊間名コンビも、確かその2人の名字も品川と池袋。しかし、何か雰囲気が違う気が…。」
綾瀬「そう、その北大路中だ。品川と池袋は、中学時代に名高い二遊間コンビだったんだ。ただ残念なのは、高校進学を気にギャル化してしまってな。」
そう言いながら、綾瀬は呆れながら言うと北大路中の二遊間コンビ改めてギャル2人組は笑いながら、私達にとんでもない事を言った。
花蓮「まあね〜どうせ私たちは野球で全国行くより、モデルになるのが夢だし〜。」
桃華「そうそう〜女子野球なんかやってる暇あったら、いっそ渋谷に繰り出して写真撮らないとね〜。」
そんな態度と発言を耳にした梓は舌打ちしてから、あの2人に言い放った。
梓「………ケッ、こんな野球舐めてる此奴等に野球部を設立させん何て、実に下らねぇな。」
綾瀬「じゃあ、やはり女子野球部の設立は…小野寺と村上の2人だけで進めるって事か?」
花蓮&桃華『はぁ!?』
梓「まあ、野球を遊び意識に、かつての二遊間コンビもギャルに落ちぶれれば大した事は無いな。」
涼子「私も梓に同感だ。こんな成り下がった奴等に野球部を設立させるのは大反対だからな。」
すると品川が私に近づいて肩を掴みながら叫んだ。
花蓮「おい、小野寺!!昨年の女子野球日本代表だが何だが知らないが!?アンタが本当に女子野球を再興したいなら、私たちの助けが必要なんじゃない?なにせ私たちは、あの北大路で活躍した鉄壁の二遊間コンビだしね〜?」
桃華「そうよそうよ!女子野球を復活させたいなら、私たちみたいな逸材を外す手はないでしょ〜?」
涼子「確かにな、だが、遊び意識にやってる奴等何かを、入部させる気はしねぇ。」
池袋は怒鳴った。
桃華「遊びだって!?さっきからあんた何様のつもりよ、私たちにあれこれ言える立場じゃないでしょ!?女子野球を再興するには、数が多いに越したことはないでしょ?なのにたった二人で何ができるっていうのよ??それに私達の実力がどれほど優れているか、実際に見てみもしないで!!」
梓「何なら見せてやろうか?今直ぐにでもよ。」
桃華「はぁ!?アンタ脳味噌のネジ外れてんじゃ__」
*
場所は変わりバッティングセンター。
其処でプロ選手コースの剛速球や変化球を全力のフルスイングで長打にさせる梓を見て、品川と池袋のギャルコンビはあんぐりと大きく口を開いたまま驚いていた。
梓「………これでも、私達が遊び意識でやってるに見えるか?」
花蓮「す…凄いじゃない…たった一年離れていた間に、ここまで実力をつけたなんて…」
桃華「うわぁ…これが…本当の才能ってやつね…。」
綾瀬「学校での態度とは全く違うな。君達2人も今やっと分かっただろう。野球は彼女達にとって遊びではない。ましてや私も野球はテレビで見る方が好きだが、お前達2人はそんな風に適当にやる気は全くない。今、小野寺と村上が女子野球部を設立しようとしているのは、本気で全国制覇を目指しているからだ。それでもお前達2人は、そんな野球を遊びだと言い続けるのか?」
綾瀬の言葉に何も言えなくなったギャルコンビ、しかし、此奴等の言う通り、私はこの2人の実力が必要だ。
涼子「品川、池袋、お前らもかつての二遊間コンビなら、全国に行きたいと言う意識がまだ残ってるのなら、私達と本気で野球をやれ。」
2人は互いに顔を見つめ合わせ、溜息をすると最早、諦めたのか、品川と池袋、其々の2人の本音を私に伝えた。
花蓮「ああもう…分かったわ、小野寺。実は私、完全に女子野球に対する情熱を失ったわけじゃなかったの。もう一度考えてみるわ。」
桃華「私も、あんなスゴ腕バッターの打球を見れたら、それもいいかも。適当に流そうと思ってたけど、気が変わったわ。」
花蓮「けどさ、何で鬼姫見たいな凄い奴がさ、暴力沙汰何て起こしたのさ?」
涼子「………中学時代に、不良に絡まれた後輩達を助ける為に、致し方無くやったんだ。梓にとってはスカウトよりも、仲間の方が大事だから。」
桃華「そうだったんだ。知らなかったとは言え、私もヤバイ奴として意識し過ぎてしまったよ…。」
花蓮と桃華はコースから出て来た梓に頭を下げて謝罪した後、女子野球部に正式に入部する事を約束したのだった。