目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
GODS:黒光の章
GODS:黒光の章
ZM_16
異世界ファンタジーダークファンタジー
2025年05月20日
公開日
48.8万字
連載中
神々が影から世界を支配する時代。過去を知らぬ青年・エデンは、自身の存在理由も知らぬまま、静かに生きていた。 だが、神の秩序を壊し新たな支配を目論む革命組織 Black Lights(ブラック・ライツ) が動き出す。 神、人間、そして反逆者の三つ巴の戦いに巻き込まれたエデンは、選択を迫られる——真実に抗うか、受け入れるか。 この戦争に正義はない。ただ力と裏切り、そしてすべてを呑み込む黒き光があるのみ。 「GODS:黒光の章」——革命が神をも試す時代の幕開け。

第 1 章: 始まり (第1巻:準備編)

神々と人間が共に歩んでいた古の時代。


だが、人々は信仰を捨て、神の存在を疑い始めた——。


それが、すべての始まりだった。




人間界と神界の絆は、やがて完全に断たれ、


時を経て、神界そのものが混乱と戦乱に包まれる。


その混乱は人間界にも波及し、


神々と人の血が交わることで、


新たな存在――神子しんしや半神が生まれ始めた。




——これは、そのすべてから遠く離れた一人の少年。


エデン・ヨミの物語である。




ジリリリリリリリッ!!)


アラームのけたたましい音が、静寂を破った。




エデン「……ん、うるさ……もう起きる時間か……?」




寝ぼけまなこを擦りながら、エデンは布団から体を起こした。


制服を手に取り、鏡の前で髪を整える。


窓の外はまだ夜の名残を残していた。




エデン(心の声)「はぁ……また退屈な一日の始まりか……。


授業、勉強、宿題、何も面白いことなんて起きやしない……。」




???「エデン〜、朝ごはんできてるぞ〜!」




エデン「はーい……今行くよー……」




階下から響くのは、どこか陽気な老人の声。


エデンは眠気まなこをこすりながら、ゆっくりとキッチンへ向かった。




テーブルに着いた瞬間——




エデン「……ん? なにこれ?」




目の前には、ホールサイズのケーキが鎮座していた。


デコレーションも完璧。こんな朝食、見たことがない。




ゲン「ほら、今日はお前の誕生日だろ?」




エデン「あ……そうか……最近忙しくて、すっかり忘れてた……」




ゲン「だから今くらい、ちゃんと祝っとけ」




エデン「いや、でも準備とかしてたらまた遅刻するかも……!」




ゲン「ふふっ、心配いらんよ。時間はたっぷりあるさ」




エデン「いやいや、今何時だと思ってんの……って、え?」




壁の時計に目をやると、短針は「5」の上に。


午前五時。




エデン「……ちょっと!?なんで目覚まし鳴ったの!?7時半のはずでしょ!?」




ゲン「あ〜……それな、ちょっと時間いじっておいた」




エデン「このクソジジイ……またかよ!!」




ゲン「感謝しろ、普段お前遅刻ばっかりだしな。


今回は優しめだぞ。十歳の誕生日、覚えてるか?」




エデン「……あの時、なぜか動物園で目覚めたやつ?」




ゲン「そうそう! あれは面白かった〜。


ライオンと仲良くなれたか?」




エデン「冗談じゃない!!


空腹のライオン家族の真ん中で起きたんだぞ!?


今でもトラウマだよ……!」




ゲン「蛇の檻の方にしようと思ったけど、鍵閉まってたんだよなぁ〜」




エデン「どこがマシなんだよそれ!


そんなサバイバル訓練、誰が誕生日プレゼントで喜ぶか!!」




ゲン「他の孫が弱いだけさ。


お前は違う。お前には特別な何かがある……」




エデン「……それ、褒めてるつもり?むしろ不安しかないんだけど」




ゲン「とにかく、今日は特別な日だ。


さあ、じいちゃんからの『初めてまともな誕生日プレゼント』、ちゃんと食え」




(チャイムが鳴る——キーンコーンカーンコーン)




エデン「うわっ、また遅刻だっ!」


バタバタバタッ(足音)




制服の裾を整える暇もなく、エデンは全力で走り出した。


風を切りながら、角を曲がるたびに誰かとぶつかりそうになる。




エデン「間に合えーっ!」




(校門を駆け抜ける)




レオ先生「ヨミ君、もう——」




ヒュンッ(紙が宙を舞う)




エデン「すみませーん!手紙読んでおいてくださいー!」




レオ「……またか……学ばない奴だな……」




(ガラッ)




エデン「失礼しますっ!遅れてすみません!」




ミヤ「誰に謝ってんの?先生まだ来てないぞ」




エデン「……まじで?ラッキー……」




ミヤ「最近ギリギリばっかだな、お前」




エデン「うん……最近さ、変な夢ばっか見るんだよ。


なんか、でっかい存在?天使みたいだったり、人じゃなかったり……


どんどんリアルになってきててさ。でも、今朝は見なかった」




ミヤ「アニメの見過ぎだろ、それ」




エデン「かもな……」




(ガラッ)




メイ先生「すみません、ちょっと遅れました」




全員「おはようございます、先生」




メイ「おはよう。ヨミ君、レオ先生からこれを預かってます」




(紙を手渡す)




ミヤ「なになに?ラブレターか?」




エデン「バカかお前……!」




ミヤ「はいはい〜」




メイ「はい、全員ノートを出して。授業始めますよ」




全員「はーい」




——数時間後




(カンカンカンカン)




エデン「ふぅ〜、ようやく終わった……」




ミヤ「今日は特に長く感じたなー、時間止まってたんじゃね?」




エデン「同感……」(グ〜〜〜)←お腹の音




ミヤ「昼、行く?」




エデン「でも、金持ってきてないんだよな」




ミヤ「任せろ、今日は俺のおごりだ」




エデン「マジ?優しいな〜」




ミヤ「でも、次はお前な?ちょっとだけ利息付きで♥」




エデン「うわ、最悪〜」




メイ「ヨミ君」




エデン「はい?」




メイ「今日はヨミ君とチバ君の掃除当番ですよ」




エデン「あっ……先生、今はちょっと……今日、部活の試合が……」




メイ「申し訳ないけど、交代はできません」




ミヤ「先生、代わりに俺がやります」




エデン「えっ?ミヤ?でも一緒に——」




ミヤ「今日、試合だったろ?忘れてたのか?」




エデン「……あっ、そうだ!やっべえ!」




ミヤ「誕生日プレゼントってことで、行ってこいよ」




エデン「ミヤ……ありがとな。ハヤトには謝っておいてくれ!」




ミヤ「任せろ!」




(ダッダッダッ)




(グラウンドの近く。タッタッタッ……!)




エデン(心の声)「なんで俺って、いつも遅刻してるんだ……っ!」




(角を曲がる——ガンッ!)




エデン「うわっ、ごめんなさ——」




???「ああ、大丈夫だよ、坊や」




エデン「すみません、本当にすみません!」




???「気にするな、また会おう」




エデン「え? また……?」




(エデン、グラウンドに到着)




アキノ監督「遅いぞ、エデン!」




エデン「すみません!監督アキノ……すっかり忘れてました!」




アキノ「……おい、レオ先生から手紙もらってなかったか?」




エデン「えっと……それも読んでないです……へへっ」




アキノ「バカかお前は……。でも、フィールドに立つと別人になるんだよな」




(ギュウウウウン——!)




突然、地面が揺れた。


ドンッ!!!




(眩しい閃光。次の瞬間——)




エデン「っ、何だ……?目が……見え……」




(煙と火の中、校舎が崩れ落ちていく)




???「ほう……まだ生きてるのか。やるじゃないか」




(倒れているアキノ監督)




アキノ「……エデン、にげ……ろ……」




エデン「せ、先生!?……っ」




バシュッ!!




???「あー、うるさいヤツだ。ヒントなんて与えるなって」




エデン「っっ……誰だ、お前……何が目的だッ!!」




???「はは、落ち着けって坊や。そんなに怒鳴ったら……」




(グサッ)




???「喉を裂いて、内臓を引きずり出したくなるだろう?」




エデン「……ッ!」




(ズッ……!)




???「おいおい、やめとけよ、リュウ」




(静かに現れる青年)




エデン「さっきの人……!」




???「うん、会ったね。改めてよろしく。俺はカイ、こいつはリュウ」




カイ「お前が今後どうなるかは……まあ、そのうちわかるさ」




エデン「……どうしてこんなことを……!」




リュウ「俺のせいだ。ちょっと試したかったんだよ……やりすぎたかもな」




エデン「試した……?人を殺してまで……?」




カイ「はっきり言うぞ、エデン。俺たちには、お前の大切な人間なんて……どうでもいいんだ」




(ゴゴゴゴゴ……)




エデン(心の声)「冷たい……この男の目、まるで命なんて無価値だって言ってる……!」




カイ「じゃ、そろそろ——」




エデン「ふざけるなァッ!!」




(ドシュッ!!)




エデンの周囲から、真っ黒なオーラが噴き出す。




リュウ「お……これは……」




(ヒュン!)




リュウの腕に、何かが突き刺さる——剣だ!




リュウ「がッ……!?な、何が——」




???「エデンーーーッ!!!」




カイ「……ほう、これは……?」




(風を切って、老人が現れる)




エデン「おじいちゃん!?な、なんでここに……逃げて、こいつらは普通じゃない!」




ゲン「ははっ、ワシを誰だと思ってるんだ?」




エデン「な、でも……後ろッ!!」




(ザッ)




リュウ「死ねッ!!」




ゲン「……ぬるい」




(スパッ!)




リュウの腕が宙を舞う。断末魔の悲鳴。




カイ(心の声)「すげぇな……。あの速度、正確さ。こいつ……本物の殺し屋だ」




ゲン(心の声)「この男……やばい、殺気がまるで獣だ。油断すれば即死だぞ」




(カイの手が、ゲンの右手をつかむ)




カイ「アンタすごいよ、ジジイ……今までの奴とは格が違う。でも——」




リュウ「カイ……何を……」




カイ「お前の獲物、もらうぜ」




(ズオオオ……)




黒い霧のような闇がカイから広がっていく。




エデン(心の声)「なんだ……この圧……身体が、動かない……」




「俺は……何もできないのか……目の前で、大切な人が殺されるのを……見るだけなのか……?」




「ダメだ……絶対に、守るんだ……!!」




(ドォン!!!)




黒いオーラが爆発的に広がる!




リュウ「ヤバい……カイ、逃げろ!!」




カイ「っ……!」




ゲン「エデンーーーッ!!」




(空間が揺れ、光と闇が交差する)




ズドォォォォォォン!!!




謎の声「……神の加護……」




——暗転——




(……静寂)




(パチッ)




エデン「……ん……?」




(目を開けると、天井が見える。だが、それは見慣れたものではなかった)




エデン「ここは……?」




???「やっと目覚めたか」




(スッ、と椅子に腰かけた男がこちらを見る)




エデン「お前……誰だ!?どこだよ、ここは!」




???「質問が多いな。まずは、助けてくれた俺に礼くらい言ってほしいもんだ」




エデン「礼?ふざけるな!俺のじいちゃんはどこだ!?」




(グッ、と男の襟を掴む)




???「……やれやれ。これだから子供は嫌なんだ」




(バシッ!)




(エデンの顔が床に叩きつけられる)




???「落ち着け。今のお前じゃ、何も守れない」




エデン「くっ……!」




???「名前は、シュン。お前を救った張本人だ」




シュン「その代わり、条件がある」




エデン「条件……?」




シュン「あの怪物たちに復讐したいなら——俺と来い。そして、『GODSゴッズ』の試験を受けろ」




エデン「試験……?勉強とか、そういうのは無理だ」




シュン「心配するな。普通の学校じゃない。そこは……神になるための学校だ」




(ビュウゥゥゥ……風が窓から吹き込む)




エデン「神……?まさか、嘘だろ?」




シュン「お前が見たあの化け物……あれが嘘だったか?」




(……沈黙)




エデン「……いいだろ。俺は行く。強くなって、アイツらをぶっ潰す」




(ギュッ)




(シュンが手を差し出す)




シュン「それでこそ、だ」




エデン「エデン・ヨミだ。よろしくな、シュン」




(パアアァァァ……)




(2人の後ろで、光と闇のようなオーラが交錯する)




——物語は、ここから動き出す。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?