カイネは刀――
先ずは、六階のグレートブルの方へ向かった。
相変わらず、階段の段差にみっちりとその巨体が押し寄せていて、セーフティエリアで阻まれていると分かっても迫力がある。
「――そっか。まずはどっきり感電作戦で行こう」
「スキルの雷矢か?」
「それもだけど――カイネの水球で階段の中に溜められるか試してみてよ」
セーフティエリアから放つのはいかがかと思ったが、狙いを6階の階段に絞ると中でぱしゃりと割れた。
そして、カイネの水球は割れても外に流れ落ちて来ない。
「そのまま、できる限り水貯めてみて」
「分かった」
先に浄化を何度も使ったせいか、水球三回でカイネの体はじわじわと疲労が溜まり出す。
七回あたりで、グレートブルの足元はそこそこ水かさがました。
「よし、こっから僕のお仕事ね――雷矢!」
雪斗が矢のないショートボウを構えると、電流が走るような矢が出現する。
パチパチと、その矢は確かに小さな雷のようだった。
二撃、三撃と雪斗が放つ。手前にいたグレートブル達が一瞬身震いをして――どっと横倒しになった。
三体ほど倒れたそれは、肉の塊や牙、毛皮となって見えない壁を通り抜けてカイネたちの足元に転がりでてくる。
「うわ、ほんとにダンジョンだわ。解体せずにドロップすんだ、素材」
「ますます非日常だな――この肉、食べられるのか?」
床に直置きが気になって、カイネはダンボールを取りに戻った。
最初はなんでダンボールで届くのかと疑問だったが、火起こしに使えたりと便利である。
カイネは鑑定カメラを、取れた素材に向けてみた。
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グレートブルの肉 ×1 [食用]
グレートブルの毛皮 ×1 [加工素材]
グレートブルの牙 ×1 [加工素材]
――――――――――――――――――
「「食用……」」
思わず、カイネと雪斗の声がハモる。
まさかと思ったが、食べられるらしい。
「これなら、食べものに困らないな!ポイント使ってストアで買い物も減るし」
「前向きだな」
カイネとしては、鑑定カメラを信じて食べていいか悩むところではある。
雪斗は再びショートボウを構え、前に押し出されたモンスターたちに感電作戦を遂行した。
再び、三体、四体とドロップしたモンスター素材たちをカイネは集めたが、グレートブルたちの勢いは弱まる。
前に出れば死ぬ、とさすがに学習したのだろう。
「よーし、それなら」
「ちょっと待て」
どのくらいでレベルがあがるのか知りたかったカイネは、マイページを開いてステータスを見た。
――――――――――――――――
慎英カイネ レベル/3 ポイント45
スキル/ 水分強奪(中)浄化(中)水球(中)
体力:LvD
筋力:LvD
敏捷:LvE
防御:LvE
器用:LvE
走力:LvE
幸運:LvE
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「雪斗、見ろ。多分レベル一つ上がる事に10ポイントらしい」
「あとは討伐貢献か。意外と早かったね。相手がレベル6だからかな」
雪斗は自分のマイページを開けると、画面をカイネに向ける。
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菊王子雪斗 レベル/レベル4 ポイント58
マジックアーチャー
スキル /火矢(中)風矢(中)雷矢(中)
体力:LvE
筋力:LvE
敏捷:LvE
防御:LvE
器用:LvE
走力:LvE
幸運:LvA
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とどめを刺している分、雪斗への配当は大きかったようだ。
「カイネ、まだやれそう?」
「水球は少し苦しいな。できれば刀を試したい」
「なら、僕の『魔法』の出番だね」
セーフティエリアの蓋然性の高さも判明し、雪斗にも余裕が現れていた。
このまま――何事もなければポイントにゆとりを持って、夜を迎えられる。