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第14話 初のダンジョン制覇

原田金物店のダンジョンの最後は、巨大な虫だった。

ビッグワームと鑑定されたモンスターは、ぐじゅぐじゅとフロアに広がっている。

数は少なそうだが、さすがにジュリエッタも素手は気が引ける相手であった。


『巨大ミミズだね』

「ミミズ?」

「地球での呼び名だよ」


賢者セリオンの声にも、嫌悪が滲む。


「我が手に集え――聖槍!」

ジュリエッタが聖魔法で巨大な槍を作り出した。

自分の体より大きい槍を縦横無尽に振り回す。


「突撃!」

槍先がビッグワームを次々と切り裂いていく。

それなりに、重量も固さもあるのだがジュリエッタはものともしない。


「吹き荒べ、風よ、刃となりて我が敵を断て──疾風刃しっぷうじん」 」


エリスもまた、風魔法でモンスターに攻撃を加えた。

戦斧は一度振り回したのだが、ビッグワームの体液が大量に飛び出たので遠距離技に切り替える。

強行突破した二人は、どんどん次のフロアに突き進んだ。


後には魔石が山と残るだけ。

ジュリエッタが更に踏み出すと、何かを踏んだ。

ゴトリという音がして、ジュリエッタの足元の一部が針山と化す。


『ダンジョンの罠だ!』

「ふっ!」


ジュリエッタの足が、更に踏み込んで岩場に亀裂が入った。そのままジュリエッタは針山を足で持ち上げて、高速で蹴り上げる。

針山は奥にいたビッグワームの体に突き刺さり、モンスターは悲鳴を上げた。


「このままボスエリアよ!」

「はい、ジュリエッタ様!」


突然、うわぁという声が下からあがり、ジュリエッタの気がそがれる。

ビッグワームの体液で足を滑らせて、聖槍が床に転がった。


「聖女様!」

「なんてことないわ、気にしないで」


エリスの目が、怒りに染まる。

ボスのキングビッグワームの死が確定した。

戦斧が縦に横に閃くと、キングビッグワームの体が幾つもにスライスされる。


叫び声ひとつ無く、エリアボスが消滅した。

立ち上がったジュリエッタと駆け寄ったエリスのD端末が鳴る。

――――――――――――――――

――@[system]

初のダンジョン無力化に成功しました。

参加者には50ポイントを支払います。

――――――――――――――――

そうして、じわじわと壁が光り出した。

とりあえず魔石を集めていると、いたぞ!と叫び声があがる。


顔を上げると、ジュリエッタが止めた初老の男性が鍋を振りかぶりながらおそるおそる近づいてきた。


「お嬢さんたちが、倒したのかね?」

「ええ、まあ」

「まあ、あれだけいたモンスターが……」


男性は、顔だけはつっこんでダンジョンの中を見ていたらしい。

呆れたような関心したような声をあげて、当たりを見渡した。

壁の光はヒビとなって、床や天井に広がっている。


「とりあえず出ましょう。おそらくはモンスターは出ないはずです」


D端末がいう無力化の意味は図りかねる。

とりあえずジュリエッタは、男性が壁を見渡している合間にエリスの戦斧をマジックバッグにしまった。


「こうしちゃいられん、俺は上に伝えてくる」


次第に興奮し出した男性は、早足でダンジョンの外に向かう。


「とりあえず、助けられた――かしら?」

「勿論です」


ジュリエッタとエリス、共にまだ疲労はない。

力強く肩を並べて、初めてのダンジョンを後にした。

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