目覚めた瞬間、私、
まず、ベッドが豪華すぎる。天蓋付きってなに?お姫様気分なの?
次に、部屋が広すぎる。ワンルーム派としては、6歩で壁にたどり着けない空間が不安になる。
そして極めつけは――鏡に映る、イケメン男子高校生の顔。
「……誰これ!?イケメンじゃん!?推しか!?いやちょっと若い、でもイケメン!!」
あまりのことに混乱しつつ、ふと手元の学生証に目をやる。
そこには、こう書かれていた。
「霧島
その名前を見た瞬間、背筋がゾワッとした。
え、ちょ、待って……それって、BLゲーム『運命に堕ちる、その前に』の主人公のお兄ちゃんじゃないの!?
つまり、私の推しである建人先輩の同級生ポジじゃない!?
「……え、夢女子転生してんじゃん……!!?」
私はOL・美里。趣味は読書、妄想、そして推しの建人先輩を見守ること。
BLゲームの中でも、“お兄ちゃんポジ”の塁くんは登場は少ないけど、地味に好きだったんだよね〜。
ただし、本命はもちろん建人先輩×主人公カップ!そこは譲れない。
「いやでも私、今、塁だし!モブじゃないじゃん!むしろ推しと同級生だし!あの名シーンも間近で見れちゃうじゃん!!最高か!?」
……と浮かれていたのも束の間。
ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴った。ドアを開けると、そこにいたのは――
「おはよう、塁。今日も迎えに来た」
黒髪ストレート、無表情気味の美形。
声は低めで少し眠そうで、だけど言葉の端々が優しい。
推し・
「ぎゃぁぁぁ本物ぉぉぉぉぉ!!!!!(心の声)」
が、乙女な内心とは裏腹に、口から出たのは自動的な“塁”のセリフ。
「ん、悪い。ちょっと寝坊してた」
建人先輩はふっと笑った。「珍しいな。塁が寝坊なんて」
ああもう待って、推しと距離近い!朝から尊い!世界よありがとう!
でもちょっと待って、なんか推し、目線が優しすぎない?
てか距離近くない?あれ?これってもしかして――
「塁ってさ、……最近、ちょっと可愛くなったよな」
「は???」
おい公式!?なんかお兄ちゃんポジに恋愛フラグ立ててない!?
私、腐女子で夢女子だけど、推しに攻略されるのは予定外なんですけど!?
乙女と腐の間で揺れる、転生お兄ちゃんライフ。
果たして美里(中身)は、主役カプを守り抜けるのか――それとも、新たなルートが“運命”になるのか。