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(漢字イイネ!!>聖★漢闘士=ヅオンさん
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gaction9969
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年05月20日
公開日
7.4万字
連載中
 ふとしたことから異世界に転移したごくごく普通の珍名高校一年生、「愛咲 丹生人(アイザク ニュート」は、日本各地の珍名高校一年生四十名ほどと共に、諸々を取り仕切る猫耳女神から有無を言わさず「能力」を与えられ、なぜか正体不明の「七曜」と呼ばれる「敵」を倒すことを強制されてしまう。漢字の部首を模した能力を宿す謎の黒い玉「部首魂《ラディカルソウル》」……使い方次第では世界を統べる代物であることをいち早く察した漢字検定準一級保持者であるところのニュートだったが、自らが引いた「部首」は使いどころも該当漢字すらも定かではないマイナー部首「鼎(かなえ)」なのであった……開幕直後の絶望の中で、それでも次々おみそ仲間を得ていくニュート。噛ませ犬という概念を擬人化したかのようなイキれ眼鏡坊主「タカアリ アリタカ」、古文書に記されている原始ツンデレの使い手、現役トップJKモデル「遠藤 ダリヤ」、人の良さがいつも困り笑顔のハの字眉から放射されているベトナムからの留学生、「袁文陽(ヴィエン=ヴァン=ヅオン)」……諸々モメながら四人は「異世界」へと着到するもそこは敵ボスがひとり「月の七曜」の居城のほど近く。まったり異世界ライフを満喫する間もなく、「鼎」に宿る謎の妖精カナエの導きも受け、「部首魂」を顕現する能力「聖漢字《セカンヅ》」の力により、敵の刺客たちを仲間と共に次々と屠っていくのであった。そして迎えた「月の七曜」との決戦。すべてを受け止める覚悟を示したニュートは、「ハイパボリック聖漢闘士《セカント》」と化してのめるように食い気味に挑んでいく……ッ!!  がんばれニュート、負けるなニュート!――キミは、島宇宙《トスモ》を漢字たことがあるか?

Quanji-01:唐突デスネー(あるいは、始まりは/様式美に)

 何だ? 何が一体、いったい何が……?


 たしか。確かに僕は教室にいて。5時限目体育の後の6時限目の古文という、


「……」


 いちばんエキサイティングな授業を、前のめり込みながら受けていた、はずだ。


<これから……アナタたちには……殺し合いをしてもらいます……>


 だのに、何だッ!? 二学期も半ばになって、そろそろ愛着も湧いて来た自分の机と椅子はそのままだったにも関わらず。


「……」


 辺りは、昼下がりひだまりの教室からは、遥かにかけ離れた様相を呈してきているわけで。


 まず、足元に広がるのは桃色ピンクい雲だ……およそ現実味を殊更に排除してこようとせんばかりの、アクティブな非現実さを網膜に直で刺し込んでくるかのような、そのような鮮明ショッキングな色合いだよ何だよこれもう……


 今の今までそこに居たはずの、教室の窓とか壁とか天井とかは、いっそ潔いほどに取っ払われていて、見たこともないような、それこそ地平線の先まで見渡せるような、そんな大空間の中ほどに阿保のように腰かけている自分を自覚はしている。


「……」


 そして周りにも、この事態を僕と同じく1nmも理解は出来ていないだろう、ちょうど僕が存在をしていたはずの「横浜市立久里浜北高等学校」の「1年B組」の教室での配置と同じながら、見知った後ろ姿とは異なる人々の影が、うつろに僕の網膜には映り込んではいるのだけれど。


 あまりのことに、あ、これ夢かなあやっぱり持久走の後の授業ってどんなに中身興味深かろうと睡魔に打ち勝つ術はやはり無いよね……的な、夢で済ませてしまえよもう、という果敢ない祈りにも似た僕の切なる想いを、鋭利な鉈状のもので断ち切らんばかりに。


<かくゆー私はぁ、最強にて最カワワな、天上天下超絶★美女神こと、『ネコォル=不二田・キッドメン』ですニャン♪>


 教壇のあったとこ辺りに代わりに鎮座していた、優雅で豪奢な玉座みたいなのに座った輩から飛び出してきた、そんないきなり大トロのサシばしったところから供してくるような、江戸前の流儀を知らなそうな脂ぎったコテコテの自己紹介に、僕は真顔になる以外の反応リアクトを返せずにいるばかりなのだけれど。


<アナタたちは選ばれし勇者……『部首魂ラディカルソウル』を有した、この世界を救うべく招来された、正にの戦士……『聖★漢闘士セカント』なのです……>


 その、どう好意的に見積もっても、オーバーエイジ枠側のアラサーと思しき、しかして妖艶さをその全身に(特にその上半身に躍る双球に)宿した、猫の耳をした(頭に付いているのではなく、我々人類が耳殻の所在地たらんところにヒマラヤン然とした猫耳が生えているという規格外の)妙齢の女性が、招き猫を模したポーズで、これでもかのウインクをしながら言い放った、その意味を1μmも掴ませてこないかのような言葉が、全ての始まりだった。


 僕と、烏合の漢字戦士たちの、壮絶な戦いの幕開けだったのであった。


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