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武装教室~『紅蓮』と呼ばれた元中二病の俺は、黒歴史を隠したい~
武装教室~『紅蓮』と呼ばれた元中二病の俺は、黒歴史を隠したい~
赤色の人
現代ファンタジー異能バトル
2025年05月21日
公開日
1.1万字
連載中
桜ヶ丘高校3年、転校生の赤羽一彦(アカバ・カズヒコ)は、ごく普通な高校生活を満喫していた。 ―――のだが、彼には誰にも明かせない秘密が隠されていた。 一つは、留年して高校3年生は2度目であること。 そして、もう一つ――前の学校で、自身を「紅蓮(クリムゾン)」と名乗り、《覚醒者》として厨二病全開のクラスメイトたちの畏怖と尊敬を集めていたこと。 その記憶は、カズヒコにとって呪いのような重荷だった。 「過去を消して、普通の高校生として新たな一歩を踏み出す」 そう決意したものの。 得られた平穏はあまりに脆かった。 かつての戦友たちが現れたのだ。 かつての「紅蓮」が囁く。 「お前は逃げられない」と。 友情と裏切り、光と影が交錯する学園異能力バトルが幕を開ける。

第1話『中二病は卒業できたけど、俺だけ留年しました』

『中二病』―――。


主に思春期、特に中学校二年生頃に見られる、自己を過剰に特別視したり、独自のファンタジー的な世界観や自己像に浸る傾向を指す日本のスラングである。


1990年代後半から2000年代初頭にかけて、ラジオ番組やインターネット文化を通じて広まったこの言葉は、若者が現実を離れ、空想的な言動や劇的な自己演出に没頭する様子を、時に愛情を込めて、時に揶揄する形で表現する。


例えば、異世界の勇者や闇の支配者を自称し、教室で大仰な台詞を吐いたり、ノートに魔法陣を書き殴ったりする姿がその典型だ。


だが、そんな「中二病」が尋常ならざる形で花開くこともある。


ある高校のクラス、40人。


全員が、いつか必ず来ると盲信する「武装集団」の襲撃に備え、ただの妄想に留まらずガチの対策を重ねていた。


ある者は自らを強化すべく怪しげな改造手術を受け、機械の腕や強化された視覚を手にし、ある者は古の呪術書を掘り当て、夜通し呪文を唱える修行に励んだ。


またある者は、異世界への転生を果たし、チート級の能力を授かって現代に舞い

戻ってきた。


そう――すべては、教室を占拠する武装集団を返り討ちにするためだ。


だが、皮肉にも、その日は永遠に来なかった。


武装集団は現れず、彼らはそれぞれの「中二病」を胸に抱えたまま卒業し、散り散りに去っていった。


この物語の主人公もまた、その集団の一人にすぎなかった。


ただ一つ、他の者と異なる点がある――。


他の仲間たちが、いまだにどこかで『その日』を待ち続けているのに対し、留年した彼だけは現実を受け入れ、普通の高校生活へ踏み出そうとしていたのだ。

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