飛鳥探偵事務所
「…はよ!おきて!」
突然、雪の声が耳に飛び込んできた。まるで夢の世界から引き戻されるように、目を覚ます。
夢を見ていた。恋人の雪と、夕暮れ時の静かな砂浜に並んで座り、結婚について話している夢だ。あの穏やかな空気の中、言葉がようやく口をついて出た。
「雪、話があるんだ。」
雪は俺の肩にもたれかかり、穏やかに「なーに?」と微笑みながら聞き返してくれた。
「俺と結婚してほしい。」
ついに、ずっと言いたかった言葉が口をついて出た。あの夢の中で、ようやく勇気を出して言ったんだ。
だが、その時、突然目の前が明るくなった。
「は!」
雪の掛け声と共に、埃をかぶったソファの上で目が覚めた。夢から引き戻された現実に、しばらくはぼんやりとした状態だった。
「おはよ!凄いうなされてたね。」
雪の笑顔が見え、私は安堵の息をついた。
「あ、あぁ...いい夢を見てた。」
うん、あの夢は現実でも叶うかもしれない、そう思った瞬間、心の中で何かが温かくなった。
でも、心のどこかで、やっぱりこの気持ちを伝えなければと思っていた。無意識に口に出していた。
「...雪、話したいことがあるんだ、大切な話。」
雪が少し驚いたようにクスクスと笑い、こちらを見た。
「急に何?」と、少し不安げに。
でも、この瞬間が、俺にとって一番大切なものだった。
「俺と、結婚してほしい。」
ついに言ってしまった。その瞬間、心臓がドキドキと速く打ち、顔から汗がにじみ出るのを感じた。
雪はしばらく黙って、じっとこちらを見つめていた。その静かな時間が、何もかもが確かに過ぎる瞬間だった。
そして、ようやく雪が口を開いた。
「私でよければ、是非したいです。」
その言葉に、俺は胸がいっぱいになった。恥ずかしそうに照れる雪を見て、俺もつられて笑顔がこぼれた。
こんなに幸せな瞬間が、これから続いていくことを信じられる気がした。
そして、俺に降りかかった全ての騒動が、今、こうして終わりを告げる。
後世の時代に残すべき物語、それがここに記されるべきだと思った。
異世界誘拐事件録