世は、まさに大冒険者時代。
人類は、より広く快適な住処を求めて、洞窟や森林を開拓した。
そして開拓の中で、ダンジョンと呼ばれる異空間を発見した。
動物よりも狂暴で、動物よりも知性のある魔物溢れるダンジョンを、最初は危険な場所だと警戒していた。
しかし、ダンジョンの中に未知の資源――永遠の若さを約束する妙薬の材料、どんな悪路でも走行可能な馬車の素材、宝石よりも美しく輝く鉱石などが眠っていると判明すれば話は一転。
人類は、輝かしい未来と欲望を叶えるため、資源を求めてダンジョンへの侵入を試みた。
誤算だったのは、ダンジョンは生きる資源だったこと。
自らの資源を奪われまいと大量の魔物を生み出して、人類の侵攻を退けようとしてきた。
結果、人類の中で貴重な資源を獲得できたのは、魔物さえ退けられる強い人間のみだった。
しかし、人類は諦めない。
金を持て余す王族貴族も、利益を追求する商人たちも、資源の数々を諦めない。
自分たちの手で資源を手に入れることができないのならば、資源を手に入れることのできる人間から買い取ればいいと真っ当な結論に辿り着き、資源に対して莫大な買取額を提示した。
莫大な買取額は、世界中の実力ある凡人たちを引き寄せた。
ダンジョンに潜れば、一獲千金も夢じゃない。
そんな夢を抱きながら、ダンジョンに潜って資源を獲得する人々が増加した。
ダンジョンの資源は高値で売買され、資源の売買によって生計を立てる人々が増加した。
そんな人々を、世間は冒険者と呼んだ。
冒険者が増えれば、冒険者を管理する組織も必要となる。
資源を買いたい王族貴族商人と資源を売りたい冒険者の仲介組織として、じきに冒険者ギルドが誕生した。
山ほど。
いつの時代も、中間マージンを貪る組織の旨味は大きい。
ある吟遊詩人は、増え続けた冒険者ギルドを見て、皮肉を込めてこう歌った。
王都には、飯屋よりも宿よりもギルドがあった、と。