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朱雀48

第○○期 竜棋戦 第7戦目―。


これまで、挑戦者3勝、王者3勝と互角の戦い。

本日を持って新たな棋王が決まる勝負の一幕。


挑戦者。相手の陣を、銀将を用い果敢に攻め入る。

対する現棋王も堅牢な守り。挑戦者を揺さぶる。


勝負終盤。


▲4一飛成

△1二王

▲3一銀

△1一王


現棋王、苦しいか。徐々に自陣が崩れつつある。


だが、挑戦者が▲3二銀成を繰り出した直後―。


現棋王、カッと目を見開く。


全てを見通せた瞬間だった。


そして、天を仰ぎ、甲高い声で咆哮する棋王。


咆哮しつつ将棋盤を掴み部屋の外へ投げ捨てる棋王。


障子を突き破り、会場外へ吹っ飛ぶ将棋盤。


静寂。

現棋王のドヤ顔。


「…反則負けです」

記録係の静かな声。


「その…元棋王。なぜあのような一手を?」

記者も困惑の様子でマイクを向ける。

「だってしょうがないじゃない!」

元棋王は怒鳴る。

「はぁ…」

「だって、そうしないとさ!そうしないとさ!王が取られちゃうだもん!」

元棋王の主張。

「王が!取られ!ちゃうんだもん!」


【執念】

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