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朱雀57

からさ」には単位があることをご存知だろうか。「スコヴィル」という単位を使用する。今は科学的な測定で算出されているらしいが、昔は、「砂糖水で何倍に薄めたら辛味を感じなくなるか」を人の味覚で判定しスコヴィルの値を出していた。


同様に「酸っぱさ」にも単位があるのか? これは、高校の化学で習った方も多い「pHペーハー」がそうだろう。水素イオン濃度から算出する。この値が小さいと酸性が強い。実際の味覚としての「酸っぱさ」は pH だけでなく酸の種類や濃度にも左右されるが、大まかな目安にはなる。


調べてみたところ、


ヨーグルト … pH 約4.0

りんご … pH 約3.0

レモン, 梅干し … pH 約2.0


とのこと。ふむふむ。


それじゃあ「青春」は大体 pH いくつくらいなのだろう?

甘酸っぱい想い出、なんて言うではないか。


うーん、気持ちヨーグルトよりは酸っぱいけれど、レモンや梅干しほど、強く酸っぱくはなかったかな。となると、青春の pH 値は大体 2.5 ~ 3.5 くらいといったところか。なんちゃって。

ああ、あの頃を思い出したら、ちょっと懐かしくなっちゃった。クラスのみんな、元気かなぁ……今度連絡してみよっと。

さ、仕事に戻りますか。ああ、お疲れ様でーす。


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pH の値を調べていた同期の机の前を通り、タマチさんは本日も会社を後にする。


タマチさんは始業15分前に会社に到着し、定時きっかりに帰っていく。

性格は真面目、堅物そのもの。まさに公務員になるべくしてなったような、そんな人物。


だが、そんなタマチさんは、かつて、pH −1.0(市販の濃硫酸に匹敵)にも相当する、激烈な青春時代を送っていたことがある。とても口には出せない過去。とても口には出せない歴史。なぜ、どうして、そんなあなたが公務員の道を選んだのか。


もちろん、タマチさんの勤め先の人たちは、タマチさんの過去のことなど誰も知る由もない。


【タマチさん】

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