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第14話 (中編)

 真っ黄色の視界。目がしょぼつくかと思ったがそのようなことはない。また、このような消化演出がある地形では、アバター消失の現象が起こるはずだった。


 なのに溶解デバフは起こらない。最近はリアリティ重視のゲームも増えて来ていて、とあるゲームではアバタークリエイト部門で賞を取ってるくらいだ。


 だから、このゲームもそのような機能があってもいい。いや、むしろスリリングさ重視なら、そこを大きく出した方がいい。


 こういう空間でこそ、時間制限システムを実装して欲しいくらいだ。私はひたすら泳いだ。もちろんどこへ向かってるかは不明だ。


 まっすぐ、ただまっすぐ。黄色の液体を掻きながら進む。上空からの騒音。タイランがなにかを飲み込んだ?


 身体が上へ上へと引っ張られる感覚。下には透明な液体が器を作るように流れてきていて、それが海水だと知る。


 つまり、水を飲み込んだことで水位が上がったらしい。これでは目的の場所まで……。


「ん? あんなところに……」


 見つけてしまった。胃液が薄まったことで視界が開け、出口を発見する。私の勘ではこの近くに電流を発生させるコアがあるはずだ。


 泳いで出口に着くと、ようやく休める段階に来た。エネミーと遭遇エンカウントしなかっただけよかったと思う。


 身体をしっかり伸ばし、感覚の異変がないかを確認すると、近くの膜を剣で引き裂いた。


 そこから、別空間への移動をする。出た先は空洞で、照明が何故かあった。ここは生物の体内で、その中に街が形成されている。


 歩き回っているのは全てゴブリンだ。魔物の街になってて、自分がここを破壊してるのに気がつくと少し申し訳ない。


 まずは状況確認。この照明が電流コアで機能しているのなら、コアを破壊すれば真っ暗だ。


 しかし、無闇にこの平穏な空間を壊そうとすると、本当に悪いことをしたと後々後悔する。


「どうすっか……」


 思わず本心が漏れる。ここを壊したくない自分と、クエストをクリアしたい自分が、今せめぎ合っている。


 こんな状態で戦えるのか? それだけが心配だ。


「おや、お客さん。何しに来たんだい?」


 私が少し歩いたところで、一人のゴブリンが話しかけてきた。とても優しそうでスッキリした輪郭の青年ゴブリンだ。


「どうやら君はクエストで来たようだけど。自分たちではそれを可能にする術がないんだ」


 これはNPC? それにしても、状況理解がしっかりしている。


「たしかに私はクエストで来たが……」


「そうかいそうかい。自分はここに移り住んでから数年が経過していてね。今移住地を探しているんだ」


「移住地?」


「そうだよ。からここがクエスト指定されると聞いてね。今移住地を探してるんだ」


「なるほど。まあ、お前たちはゴブリンだし。地上は敵扱いされるかもな」


「そう、そこなんだよ」


 受け答えがしっかりしてきた。これはNPCではない。クリムと同じ部類だ。私は、ここに来た理由を全て説明した。


 ゴブリンもタイランの体内で生活してる理由を説明してくれた。このゴブリンの名前はどうやらリクというらしい。


 偶然なのか、私の兄の名前と一緒だ。それで余計に親近感が湧く。


「リク。お前はどんな場所を希望しているんだ?」


「どんな場所……ねぇ」


「ん?」


「いや、自分はここの外の世界を知らないから、想像もできなくてね……。どうしたものかと。だから新しい土地を探せないでいる。っと説明したらわかるかな?」


「まあな。私がこのゲームの運営だったら、すぐに新エリア開拓するんだが……」


 私がそう言うと、リクはハッとしたように走っていった。彼を追いかけると、コンソールのような物を見つける。


 リクはこれはもしもの時に使ってくれと、から言われて渡されたと言ってくれた。


「もしもの時……か。ちょっと起動するか確認させてもらう」


「お願いします」


 私はコンソールの操作を開始する。そこからゲーム改変のページに飛び込んだ。一般プレイヤーにこんなことをさせて平気なのかと、疑問に思う。


 次に検索ページを表示させた。そこからプログラミング言語の一覧を開く。


 使われているプログラミング言語を手探りで探し出し、ヒットした単語で改変させる。


 まずはこの海全体の広さ。そこをゲームの全体容量に合わせた最大数まで上げる。そこから、新しい地形の生成。


 私は絵が苦手なので、自作の地形は作らない。実在する地形をベースにカスタマイズを行い、外部空間に投下させた。


 次にそこへ繋がるゲートだ。それを生成させると、道が繋がった。


「ルグアさん……。凄いですね……」


「まあな。これでも、数千以上のゲームをプレイしてきたからさ。一応l基本というか大雑把なコードは覚えている」


「そうなんですね。ありがとうございます。これで移住できそうです」


「良かったな。んじゃ、全員が移動できたらクエストの続き入らせてもらおうか」


「それでお願いします! 本当にありがとうございました!」

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