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「旧穢栖出夷爺頭村跡地祠損壊事件」と「軍魔刑務所男性受刑者多発変死事件」との関連性についての研究
「旧穢栖出夷爺頭村跡地祠損壊事件」と「軍魔刑務所男性受刑者多発変死事件」との関連性についての研究
ぼんげ
ホラー都市伝説
2025年05月22日
公開日
1万字
完結済
本論文では「旧穢栖出夷爺頭村跡地祠損壊事件」と「軍魔刑務所男性受刑者多発変死事件」との関連性の考察を目的とする。 この論文が、故・保茂野雁造氏の名誉回復へと少しでもつながれば幸いである。 ※このお話はフィクションです。実在の人物や団体および事件等とは一切関係はありません。

序論

 歴史の闇の中へと消えていった廃村、旧「穢栖出夷爺頭えすでいじいず村」。その跡地にて今もなおひっそりと、とある祠の残存が確認されている。この祠は、当時の村民たちが、かつてこの地で頻発していたとされる河川の氾濫による浸水被害をこの地に伝わる土地神の祟りだと考えたために、その沈静化を図るために建築したものだとする説が一般的だ。


 18世紀中頃に建てられたものだとする説が一般的なこの祠だが、今の姿に至るまでには数回の再建を挟んでいる。そのほとんどは老朽化に伴う再建だが、うち2件については何者かの手により破壊されたことに伴う再建だと記録が残されている。


 そのうちの一つが2022年に発生した「旧穢栖出夷爺頭村跡地祠損壊事件」である。自称動画配信者の芭摺ばずり泰三たいぞう(以下「芭摺」)を器物損壊と礼拝所不敬の容疑で逮捕することで解決とされたこの事件ではあるが、事件後の経過について当時の記録類を改めて見返すと、かなり不審な点も多く見受けられる。


 その最たる例となるのが、芭摺の身柄を拘束していた軍魔ぐんま刑務所内で発生した、芭摺をはじめとした男性受刑者たちがみな臀部を露出した状態で変死しているのが多発的に発見されたという大量変死事件、いわゆる「軍魔刑務所男性受刑者多発変死事件」である。当時、軍魔刑務所の所長を務めていた保茂野ほもの雁造がんぞう(以下「保茂野」)が不同意性交等致死傷罪の疑いで逮捕されることとなったこの事件だが、保茂野は獄中で死を迎えるまでの数年間、一貫して事件への関与を否定し続けていた。


 実際問題、保茂野が検挙されるまでに至った経緯も、彼が日頃から男性同士による性行為を撮影した成人向け映像作品を愛玩していたことが軍魔県警による捜査の過程で判明し、不同意性行があったと思われる遺体の状況と保茂野の性的嗜好が合致したからだという、因果関係や確実性にきわめて疑問符のつく嫌疑からであり、実際、保茂野の逮捕の正当性については当時から議論が紛糾している。かくいう私自身も、保茂野の逮捕については懐疑的な立場を取っている者の一人だ。


 そこで私は、この「軍魔刑務所男性受刑者多発変死事件」が、芭摺が損壊させた祠の御神体による祟りなのではないかという仮説を立て、「旧穢栖出夷爺頭村跡地祠損壊事件」とのつながりについて検証してみることとした。


 これは、刑事事件に対するアプローチとしては不適当なものかもしれないが、同時に一民俗学者の立場としては決して無視できない視点であるとも言えるだろう。


 本論文では、「旧穢栖出夷爺頭村跡地祠損壊事件」と「軍魔刑務所男性受刑者多発変死事件」との関連性の考察を目的とする。


 この論文が、故・保茂野雁造氏の名誉回復へと少しでもつながれば幸いである。


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