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第10話

「そういえば、アランはなんで旅をしているんだ?」


「そうよ。秘密にするのは良くないわ。話しなさいよ」


「……父さんを探している。小さな頃に別れた父さんをな」


「そうなんだ。この旅でお父さんも見つかったらいいな」


「ふーん、親離れできないのね」


「ベル! 言いすぎだぞ!」


「別に構わない」


「アラン……」


 ぷいっと顔を逸らしたベルに対してルフは叱るが、当の本人であるアランは気にした様子はない。


 恐らくだが、アランは誰にも期待をしていないのだろう。


 期待をしていないから絶望もしない。そんなアランを見てルフは悲しいと感じていた。


「ねぇ、なんでベルはアランに厳しいのさ」


「いきなりなによ」


 アランは近くのオアシスを見つけたので水を汲みに行っている間に、ルフは疑問に抱いていたことをベルに尋ねる。


 ベルはというと自覚がないのか眉間に皺を寄せてルフを見た。


「さっきのもいつものベルなら言わないじゃないか。だから、なんでアランには冷たいのかなって」


「言わなきゃいけないわけ?」


「いや、嫌ならいいけど……」


「じゃあ、この話は無しね。さきにテントの中にいるわ」


 ベルの不機嫌オーラに勝てなかったルフは目を逸らして、うやむやにしてしまった。


 ベルは手を振って女専用のテントに行ったので追いかけることは叶わなかった。


 やってしまったとルフは頭を抱える。


「どうしたんだルフ。頭なんか抱えて」


「あぁ、アランか。いやー、ベルになんでアランに冷たい態度を取るのかって聞いたけど聞けなかったんだ」


「そんなことか。オレは気にしていない。ただルフからしたら気まずいよな。すまない」


「い、いや、そうだけどそうじゃない。せっかく一緒に旅をする仲間だからさ。仲良く出来ないかなって」


「……ベルがオレを仲間とは思ってないからじゃないか?」


 アランの言葉にルフは首を傾げた。


 もし、そうだとすればベルらしからぬ行動だからだ。


 だって、アランに会いに行くか悩んでいた際ケラーとか関係ないでしょと言ったのはベルだからだ。


 ケラーだから差別している可能性は低いだろう。


「まぁ、オレには女の気持ちは分からない。もしもの時はオレが抜ける」


「えっ! そ、そんな」


「もしもの話だ。そうならないことを願っている。明日も早い。見張りはするから寝るといい」


「……うん、おやすみアラン」


「おやすみ」


 複雑な気持ちを抱えてままルフは男用テントの中へと入っていった。


 ルフはテントの中で横になりながら考えていた。


 もしもこのままベルとアランの仲が良くならずに、アランが抜けてしまう未来を想像すると、きっとベルも後悔するだろう。


 幼馴染としてそれは悲しいし、自分も後悔しながら旅をしなくてはいけなくなる。それだけは避けたかった。


「でも、どうしたらいいんだろう」


 誰も答えてくれない問題を抱えて、ルフは眠れない夜を過ごすのであった。

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