その頃アランが作ったブカのスープを食べ進める二人。
白くてハートの形をしており、コトコトと煮込むと柔らかく美味しくなる野菜と、とろみと塩味が効いたスープはシンプルながらもお腹も満たされて美味しい。
大きめに切られたブカを嚙みながらルフはアランに話しかける。
「にしてもよくさすらいの医者がいるって気付けたな。俺知らなかった」
「旅人の間じゃ有名なんだ。一週間分の食料をもらう代わりにどんな病や怪我でも治すってな」
「そんなすごい医者がいるのか。でも、一週間分か。なかなかキツイな」
「だからこれからは医者を探しながら獣を狩るぞ。アイツは嫌だろうがオレは背負いながらでも戦うことが出来る。いざとなれば、オマエがモイラを使ってベルと一緒に逃げろ」
「そんなアランを置いて逃げるなんて嫌だよ」
「もしもの話だ。旅はいつも最悪を考えなくてはならない。一番の最悪は全滅だ。オレは一人でもやれるが、オマエラは違う。まだ旅を始めたばかりかつイグニスだ。いざとなったら近くの村に受け入れられてもらえる」
アランの言葉に言い返すことが出来ず拗ねたような表情を見せるルフにアランは乱暴に頭を撫でた。
アランはいつも自分を犠牲にした提案ばかりしてくる。
理由は様々あるだろうが、どれもアラン自体がアランを大事にしていないからだろう。
その事実を突きつけられる時、ルフの心は傷つく。
誰もアランの味方になって来なかった結果だ。
そして、ルフもまだアランの仲間としてだはなく、守るものとして見られている。どうすれば、アランを休ませることが出来るだろうか。
こういう時にベルに聞くのだがベルは寝なくてはならない。デコボコの関係はまだ修繕するのは難しいだろう。
「分かった。だけど、アランを見捨てる選択肢はないからな!」
「……そうか」
たった一言だが、否定をされなかったことが嬉しいルフは頑張るぞと自分に言い聞かせた。