イエラーを一口食べたら寝てしまった。アランは手慣れた手つきで狩ったトビーを干し肉にする部分と今日使う部分に分けていく。
「アランは何歳から旅をしているんだ?」
「七歳から。今年で十八だからもう十一年も旅をしている」
「七歳から! 俺とベルが一四だから大先輩だ!」
「村にいてもいいと言われたが、父のことが気がかりでな。それでせめてものとグロームを貰ったんだ」
「へー、いい村だったんだな」
「あぁ、優しい村だったよ。いつかオマエラにも紹介したい」
「いいね。是非紹介してくれよ」
ルフは火を起こしながらアランの話を聞いていた。
旅慣れているとはいえ、まさか七歳で旅に出てるとは思わなかった。
村の住民も心配で仕方がなかっただろう。それでも旅立つと決めたアランの強さに憧れと尊敬を抱いた。
「ほら、できたぞ。トビーのスープ煮だ」
「ありがとうアラン」
鉄でできたお椀にそっと注がれた透明のスープに、肉の塊が入ったシンプルなものであった。
岩塩で味付けたものはさっぱりしていて美味しい。疲れた身体に染みわたる。
白い息を吐きながら、冷えた身体を温める時間。
しかし、本当は三人だったんだ。たった一人いないだけでこんなにも寒く寂しいだなんて想像しなかった。
そもそも、ベルとは生まれた時から一緒だった。何かがあればベルに頼んだし、ルフもまたベルに頼まれたりしたのだ。
今みたいに静かなベルなんて見たことがなかった。早く病気を治したい気持ちが食事をするたびに大きくなる。
「早く医者を見つけようね」
「……あぁ、そうだな」
アランも何か思うところがあるのか静かに頷いた。星だけの世界で二人っきりの食事が続いたのであった。
今日はルフが見張りをする番であった。
代わろうかとアランに言われたが、ルフは首を振った。
アランは昨日から休まずに何かしらの作業をしているのだ。
見張り番ぐらいやらなきゃ迷惑を賭けてしまう。空に浮かぶ星を眺めながらルフは考える。
もしも、この世界に太陽があったならば、どうなっていたのだろうと。
まず皆の顔が火が無くても見えるだろう。
そして、植物の育ちが良くなるかもしれない。そしたら餓死する人間が減るだろう。
何より、暖かくなるだろう。
外はいるでもマイナスの世界。
獣の毛皮等を被っていないと身体が凍ってしまう。
うっかり指が欠けてしまったと笑うおじさんも見たことがあった。太陽さえあれば今の生活は一変することだろう。
だが、きっといいことだらけではないはずだ。もしかしたら熱で身体が溶けるかもしれないし、獣が活発化するかもしれない。
何故、太陽を探すのか。
それはただの好奇心だ。
ルフの好奇心に二人を付き合わせてるだけに過ぎない。
二人はなんで太陽を探すことに賛同してくれたのか。今度聞いてみようと思った。
そして、ついてきてくれる二人の為に自分は強くならないとと、ルフは空に手を伸ばしてぎゅっと握り締めれば硬く誓った。