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第20話

 ソフィアの介護もあってか、ベルの体調はみるみると良くなっていって久しぶりにテントの外で食べれるまで元気になった。


 まだ、病人ということもありお腹に優しい白い粒が特徴のメコをふやかして、ニンニンとジャガーを混ぜた煮込み料理を朝食にした。


 またベルが元気になったことが、ルフは嬉しかった。


 だけど、迷いもある。ベルをこのまま旅に連れて行っていいのかという迷いが。


 恐らくベルが倒れた理由はストレスによるものだろう。


 前からアランとは衝突をしていたし、村にいたベルからしたら、長期間の旅は慣れていないのもあってしんどかったんじゃないか。


 なら、村の人にベルを置いてもらえないかをお願いした方がいいんじゃないのか。


 ベルならどの村に行っても大事にされることだろう。


 その方がベルも幸せなのではないかとルフは揺らいでいた。


 そんな中ソフィアはベルを肘で突っつき何かを急かしている様子が見られた。


 ベルは意を決した表情になると、キュッと閉ざしていた唇を開いた。


「ア、アラン! 今まで冷たい態度をとってごめんなさい!」


 本人も予想だにしなかったのか大きな声にベル自体が驚いていた。


 無論、謝られたアランも驚いて目を点にしているし、ルフも口をあんぐりと開けて間抜け面を晒しているし、ローに至っては驚きすぎて、すってんころりんと後ろに転んでいる。


 ただ一人ソフィアだけが嬉しそうに笑っていた。


「よく言ったねベルちゃん。ほら、お兄さん返事してあげなきゃ可哀相でしょ?」


 緊張から硬直しているベルをほぐすように、ソフィアは抱きしめて頭を撫でまわす。


 そして、謝られたアランに対してニヤニヤしながら尋ねることだろう。


 アランは恐らく事の発端はソフィアだと気付けば、驚いたことを隠す為か帽子を深く被り直す。


「……オレは気にしていない。ベルのことは邪魔だと思ったこともないし、むしろ助かっている部分もある。だから、オレは一緒に旅を続けられたら嬉しい」


 ルフはアランの言葉に再度驚く事だろう。


 アランはベルのことを仲間だと認識していた。


 だけど、ベルがアランに心を開かないから黙っていたのかもしれない。


 今のアランの表情は見えないけれど、声は酷く穏やかであった。


そのこともあってベルは安心したのか、じわじわと瞳に涙を溜めていきソフィアに抱く。


「よかったー! 頑張ってよかったー!」


「おー、よしよし。よー頑張った。ベルちゃんは偉いねー」


 まるで姉妹のような関係にアランはあの間に仲良くなったのかと感心をした。


 でも、このままだとソフィア達とはお別れなんだろうなと思うと寂しく感じた。


 自分達は太陽を探している。彼女達はさすらいの医者。誘っても断られる可能歳が高い。


 だから迷っていた。すると、ローが口を開いた。


「ねぇ、ソフィアくん。ぼくルフと一緒に太陽を探したい。一緒に探したい」


「えっ?」


 ローの言葉にソフィアは固まってしまった。


 ローは自分の意見を言うタイプではない。どちらかというとソフィアのいうことを聞くだけだった。


 それがどうして?


「理由聞いてもいい?」


「ルフがね、太陽の話をしていた。ぼく、太陽のことは言葉では知っているけど見たことない。ぼくお母さんも、お父さんも知らない。もしかしたら、太陽探すことで分かるかもしれない」


「なるほどな」


 その言葉にソフィアは考える素振りをする。ローはまだ七歳だ。


 ルフ達は確かに強いかもしれないけれども、ローのモイラは戦闘向きじゃない。


 いつ死んでも可笑しくはない。だけど、ローの気持ちも分かる。


 暫く考えた後に導き出された答えを皆は見守っていた。


「分かった。じゃあ、私も一緒に行く。そうじゃないと心配だからね」


「本当!」


「本当だよー。お姉さん嘘つかないよ」


「ありがとうソフィアくん!」


 にこやかに笑ったソフィアに対して、ぎゅっとローは抱きしめた。


「てなわけで私達も一緒に太陽探ししていいかなルフちゃん」


「うん! 勿論いいよ。アラン、ベルいいかな?」


「オレは構わない」


「アタシもいいわよ。むしろ大歓迎!」


「ということで大丈夫だよ。俺も歓迎するよソフィア、ロー」


「よろしくー」


「よろしくね」


 かくして三人の旅に二人の仲間ができた。空には相変わらず星達が輝いている。


 世界に太陽が、月が存在するのかは分からない。


 それでも五人は歩むことを辞めはしないだろう。


 例え残酷な未来が待ち構えていようとも。

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